大事なのはお客さんを「どうもてなすか」

「賞レースで勝つコント」と「面白いコント」は何が違うのか? かが屋・加賀が「面白すぎて死ぬかと思った」と語ったあるトリオのコントとは_4

——自分たちがおもしろいと信じるものをやることと、賞レースで勝つことって、無理なく一致すればいいですけど、そうでない場合は、本当に難しいですよね。どこまで適応すべきなのか。できない部分もあるだろうし、したくないという部分もあるだろうし。

加賀 僕らにはキングオブコント用にネタを作れるほどの器用さはない気がするな。ただ、ハナコが2019年に優勝したときの2本目の『犬』っていうネタがあるじゃないですか。あれを劇場で観たとき、おもしろ過ぎて死ぬかと思ったんですよ。

でもね、正直、キングオブコントで通用するとは思わなかった。誤解を恐れずに言えば、中学生でも考えられるようなネタですから。「ワンちゃんの気持ち」みたいなタイトルで。一見、普通そうで、ぜんぜん普通じゃないネタなんです。それを構成と演技力で、キングオブコントで勝てるネタにした。

はみ出して、はみ出して、一周して元に戻ってきて優勝したみたいな感じがしましたね。うまく言えないんですけど、あのやり方なら自分たちにもできるかもしれない。完全に合わせるのではなく、合わせたと錯覚させてしまうというか。

——錯覚?

加賀 見やすいと思わせて、見させちゃう。単独ライブを観に来る人は基本的に僕らのファンなので、どんなネタをやっても向こうから歩み寄ってきてくれるんです。

でも、キンブオブコントのお客さんは、僕らを観るのは初めてだという人もたくさんいる。そういうお客さんって「今日はどんな風にもてなしてくれるんですか」という気持ちでいるものなんです。

賀屋 お客さんって、「もてなしてくれてるな」というのを感じるとネタに入ってきてくれるんですよ。

——賞レースのお客さんは、どうしても構えてしまうと言いますよね。

加賀 変な緊張状態になりますからね。普通のライブに比べると、笑っちゃいけないと言われている状態に近い。ネタを純粋に楽しむというよりも、このコンビはスベらないかな、ネタを飛ばしたりしないかな、みたいな感情が入っちゃうので。

でも、そういう状態って、一個おもしろいことがあるとバーンと弾ける。緊張って、弓をキューっと引いている状態に近いので。どこかで耐え切れなくなって、手を離したくなる。そのきっかけのひとつになりうるのが、「もてなし」の精神だと思うんですよね。

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取材・文/中村計 撮影/村上庄吾

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「キングオブコント2022ファイナリストインタビュー」
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