新卒一括採用を止めた──通年採用や内定期間延長の取り組み
メンバーシップ型雇用一辺倒でも、通年採用で新卒一括採用時の足切り用に学歴を使うのでもなく、相性(組み合わせ)を考える採用に舵を切る会社もあります。
・ファーストリテイリング(ユニクロ)の事例
「ファーストリテイリンググループでは一人一人が仕事について真剣に考え、主体的に行動し、納得した将来が送れるように、一年中いつでも応募を受けつけています。学年、新卒・中途、国籍を問わないオープンな採用方法にすることで、みなさんが、自分にふさわしい仕事とは何かを考えるチャンスを増やし、一人一人が主体的に、自由に応募できるようにしています。(中略)
ファーストリテイリングが考える就職活動の主役は、企業ではなくあなた。誰かに決められたタイミングではなく、就職活動をするタイミングもあなたが選べるべき。大学1、2年生、大歓迎です。(中略)ファーストリテイリングの通年採用では一年に一度、選考年度が変われば再チャレンジ可能です。(中略)
選考フローの人事面接を通過した方には『FRパスポート』を発行。発行から3年以内はこのパスポートを提示すれば、いつでも最終面接を受けられます」
新卒一括採用という採用慣習によって、学歴で表されるとされる謎の「職務遂行能力」の見極めに企業が頼ってしまう点を指摘してきましたが、ユニクロで有名なファーストストリテイリングの事例はどうでしょうか。採用の門戸を時間軸とともに広げ、応募を分散させるというのは、学歴に拘泥しないための重要な素地と言えます。
理にかなったトライですが、学歴に頼らぬ個人の見極めを具体的に何で行なうのかは、公表されている情報からはわからず、注視が必要と考えます。
・星野リゾートの事例
「現在の就職活動は新卒一括採用の仕組みで企業都合のスケジュールや選考フローが主体」 (トラベルボイス=Yahoo!ニュース、2024年10月15日)という現状に鑑みたうえで、「学生と企業が対等な関係で相互にマッチングを確かめることができる仕組みを推進する。
内定後は、実際に施設で先輩社員と対面で話し、仕事の様子を見ることができる『Go─KINJO』プログラムや、入社に向けて気になることを人事や先輩社員に1対1で聞ける機会、LINEを介して気軽に質問ができる仕組みなども提供する。インターンシップも1日から長期まで幅広く用意。全国の施設でアルバイトして入社までの準備期間を過ごすことも可能」と言われているのは、星野リゾートです。
職務遂行能力を見極めてやろうという発想ではなく、人と人との創発可能性を相性という観点から探ろうとするがゆえの、一連の取り組みであると理解できます。一般にこれまでの新卒一括採用は、企業と個人(学生)との間の情報格差や権力勾配は所与のものとしてきました。しかしコミュニケーションの双方向性を増す仕組みを考えている様子から、抜本的な人材マネジメントを試行錯誤していることがうかがえます。