過酷な現場で精神状態をフラットに保てたワケ

――介護職員による入所者への暴言・暴力などが報じられることがあります。あってはならないことですが、介護職に就く方々のさまざまな面における不安定さを象徴しているように感じます。

鈴木早智子(以下同) そうしたニュースがあるたび、本当に心を痛めます。介護の現場は常に人手不足で、しかも忙しく重大な責任の伴う仕事であるにもかかわらず、一般に言われているようにお給料も多いとは言えません。そうしたなかで、精神的に病んでいく介護職員を私もみてきました。

職場で記念撮影する様子
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――具体的に、現場において人手不足を実感するときは、どんなときでしょう。

たとえば排泄の介助をしているとします。ところが別の入居者さんから呼ばれることがあります。別の職員が対応できればいいですが、人数がいないため必ずしも対応できる場合ばかりではありません。当然ですが、こうした場合は、生命に関係する方に注力することになり、排泄の方は少し待ってもらうことになります。

新しい職員が入ってきても、すぐに辞めたりといった状況の改善が難しいのが現状です。

――介護職における大変さは、時間的な制約がきついことや体力的に摩耗することだけではないということですね。

おっしゃるとおりです。それらの大変さがあることは大前提で、精神的な負担が大きいこともあげられると思います。

介護職員は入居者様たちをケアする立場ですが、「ケアをする人のケアをどうするか?」という問題を真剣に考えなければならない局面にきていると感じます。

現在のさっちん
現在のさっちん

――そうした環境のなかで、鈴木さんがご自身の精神状態をフラットに保てたのは、どうしてだと思いますか。

入居者様の笑顔で自分も逆に元気を与えてもらっていたことが大きいと思っています。

もう一つ、強いて言うならば、芸能界で生きてきた経験も、関係するのかもしれません。日々さまざまなことが起きるなかで、自分を保つためには、しっかりと目標を定めてブレずに進み、自分の精神は自らで律しなければなりませんでした。

介護業界においても、「入居者様のお気持ちに少しでも寄り添えたら」を第一に考え、少しでも入居者様が安心出来る環境を整えられたらいいな……と心から思いました。