「結局、解決への道を閉ざしてしまったんです」
第三者委が指摘した計11件のパワハラ行為は認めるが、自分への処分は行なわない。匿名で疑惑を外部に知らせた元県民局長のAさんを特定し、処罰したことが公益通報者への不利益な取り扱いを定めた法に違反するとの指摘はそもそも受け入れない――。
第三者委の報告が公表されてから1週間を経て斎藤知事が3月26日に示した反応に、県職員の一人は怒りを通り越し「もう無理です。斎藤知事とはやっていけない」とあきれ果てた表情を見せた。彼がそう語るのには理由があった。
「斎藤知事が地位にとどまりながら県政の混乱を終わらせるために、複数の県幹部が知事の説得を試みたんです。でも知事はその進言をけんもほろろに扱い、結局解決への道を閉ざしてしまったんです」
そう言って頭を抱えた県職員は「やっぱり斎藤知事では無理です」と絞り出すように話す。失敗した説得とは、告発者であるAさんの名誉を回復させようというものだったという。
「Aさんは昨年3月12日、知事が日常的にパワハラやおねだりを行ない、公金不正支出の疑いもあるなど7項目の疑惑を綴った告発文書をメディアなど10か所に送りました。
文書の存在を知った斎藤知事は腹心だった片山安孝副知事(昨年7月に辞職)らに発信者探しを指示。メールの分析でAさんを疑った片山氏は、事情聴取でAさんから自分が発信者だという自供を引き出し、県公用パソコンを取り上げました。
そして斎藤知事は昨年3月27日の記者会見でAさんを『公務員失格』『うそ八百』と非難したのです。
その後5月には、告発文書を送ったことと、他に3つの不適切な行為をしたとの理由でAさんを停職3か月の懲戒処分にします。ほかの理由はいずれも、取り上げたパソコンの中にあったデータを見て、はじめて県当局が分かった内容でした」(地元記者)
だが、その後、他の職員からもパワハラ証言が出るなどして告発文書には信ぴょう性があるとの見方が強まり、県議会が調査特別委員会(百条委)を設置し疑惑究明が本格的に行なわれることになる。そうしたさなかにAさんが急逝。自死とみられた。
「百条委の設置前、片山氏が取り上げたパソコンの中にあったAさんの私的なデータがプリントアウトされ、当時の井ノ本知明総務部長が県議らに見せて回っていました。
百条委ができてからは、当時いずれも維新に所属し、委員会の副委員長だった岸口実県議と同委メンバーだった増山誠県議がこの私的データの開示を執拗に求めました。いずれも、Aさんを貶めて告発は信用できないと印象づける狙いだったとみられます。Aさんは私的データの内容が出回ることに苦しんでいました」(Aさんの友人)