大谷の笑顔と〝謎めいた部分〟がファンを虜にする

16年に日本ハムで大谷と同僚だった、現マーリンズの中継ぎ右腕バースにとっても、今や大谷は「憧れの存在」。4月の試合前。大谷の日本ハムの16年当時のビジターユニホームを持参し「To Anthony’ 2016 Japan Championship」の文字とサインを書いてもらい、大喜び。同年の日本シリーズで優秀選手に輝いた右腕は「あの日本シリーズは本当に楽しかった。彼はこのユニホームを見てとても驚いて、笑っていた。会うのは3年ぶり。とても大人になっていたね」と、うれしそうに話していた。

極めつけは9月5日のタイガース戦での出来事だ。エンゼルス9点リードの8回1死一塁。通算354勝、サイ・ヤング賞7度のロジャー・クレメンスの四男で外野手のコディはマウンドに上がると、大谷を見逃し三振に仕留めガッツポーズをつくって大喜びした。三振を奪った記念ボールをもらったコディは、翌6日に大谷から「What a nasty pitch!」(なんてえげつない投球なんだ!)と直筆でメッセージとサインを添えられて、さらに感激。歴史に名を残す大投手クレメンスの息子にとっても、大谷は今をときめく大スターであることには変わりはないようだ。

さらには、米メディアにも「大谷ファン」がいる。前述のアストロズの右腕バーランダーの実弟で、米FOXスポーツのアナリスト、ベン・バーランダー氏だ。企画取材を兼ねて8月19日に来日すると、1週間にわたり岩手、北海道など「大谷ゆかりの地」を巡った。

滞在中は多くの大谷ファンとも交流。大谷が所属した岩手・水沢リトルの練習グラウンドも訪れた。「当時はヘッドコーチだった現在の監督(佐々木一夫氏)に、翔平が子供時代にどんな選手だったか、聞けたのも貴重な機会になった。翔平はよく右翼後方の川に打球を打ち込んでいたらしい。ボールがなくなり、コーチからは〝引っ張り禁止令〟が出るほど。それで左方向へ打つことを覚えた。ここが全ての始まりだったんだ」。大谷のルーツに直に触れ、感激の連続だったという。

敵味方関係なく、ここまで人々を惹きつける大谷の魅力とは何なのだろうか。まず人懐っこい笑顔がいい。もちろんプレー中は厳しい表情を見せるが、いざ試合を離れれば、チームメートやライバルたちと楽しく交流している姿は、これまでの日本選手にはなかなかなかった光景だ。

また、大谷は時折、試合前に即席サイン会を開くなどファンサービスには積極的だが、多忙を極めるためその時間はどうしても限られる。取材対応やオフのテレビ出演も同様で、そもそも自身が目立つことをあまり好んでいない。投打二刀流の規格外のパフォーマンスはもちろんのこと、大谷自身のこの〝謎めいた部分〟も魅力の一つに感じる。

レギュラーシーズン終了まであと約1カ月。目下の注目は2年連続のMVPを獲得できるかどうかで、オフにかけても「大谷マニア」は増殖し続けると予想している。

文/柳原直之(スポーツニッポン新聞社)
画像/アフロ