無事をアピールでトランプ支持者は結束

事件はペンシルベニア州での集会中に起こった。トランプ前大統領は支持者の声援を浴びながら登壇すると、11月に行われるアメリカ大統領選に向けて演説を開始。演説が10分ほど経ったところで銃声が鳴り響き、聴衆の歓声は悲鳴へと変わっていった。

銃弾はトランプ氏の右耳付近に命中し、耳の辺りを押さえて体を伏せたが、発砲はその後も続いていく。しばらくするとSPが駆け付けて退避に動いたが、ここでトランプ氏は、力強く右拳を掲げて無事をアピールした。

耳付近からは痛々しい流血が鮮明に確認できたが、トランプ氏は「Fight! Fight!」と繰り返し、聴衆は一気に沸き立つ。シークレットサービス(SP)はトランプ氏の行動を静止しようとしたが、それでも拳を掲げる姿に聴衆は「USA」コールで応えるのだった。

銃撃後に拳を突き上げるトランプ氏 トランプ氏暗殺未遂(写真/共同通信社)
銃撃後に拳を突き上げるトランプ氏 トランプ氏暗殺未遂(写真/共同通信社)
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その後、トランプ氏は容態の安定が伝えられ、事件から約2時間半後には自身の会社が運営するSNS「Truth Social」を更新し、「銃弾が右耳の上の方を貫通した」などと事件に言及。また、1人が死亡、2人の負傷が伝えられている聴衆に追悼の意を示し、警護したシークレットサービス(SP)にも謝意を示している。

こうしたトランプ氏の一連の対応について、「アメリカ国民に訴える力は大きい」と指摘するのは『Z世代のアメリカ』などを著書に持つ、アメリカ政治外交が専門の同志社大学大学院・三牧聖子准教授だ。

「暗殺から助かる強運や、窮地において強さと冷静さを見せた姿勢は、移民問題や戦争など国内外で『アメリカは危機にある』との感覚を強めてきたアメリカ国民が求める強いリーダー像に合致します。党大会直前に起こったこの事件は、トランプ氏のもと支持者をさらに団結させるでしょう」(三牧氏)