「金太郎、慟哭する。」(集英社文庫・コミック版11巻収録)
金太郎の弱気に喝を入れた意外な人物
出産は本来、祝福されるべき出来事だ。だがその一方で、命がけの修羅場でもある。だからこそ人は、最悪の事態を想像してしまう。
『サラリーマン金太郎』第98話は、そんな出産の恐ろしさと、家族の本音が一気に噴き出す回である。
この回では、美鈴の出産が始まるものの、明らかに様子がおかしい。医者からは、最悪の場合、母親か赤ちゃんか、どちらかを選ばなければならない事態もありうると告げられる。
ここで金太郎は完全に取り乱す。というのも、金太郎は幼い頃に母を亡くし、さらに最初の妻・明美もまた、息子・竜太の出産時に命を落としているからだ。
自分のそばにいる女は不幸になる。そんな思い込みが一気によみがえり、金太郎は「死ぬんなら俺だァ 俺が死ぬ! もう嫌だあああーっ」「俺は女を殺すくさった運命を持ってるんだ……」と絶叫する。
だが、この修羅場で金太郎を叩き起こしたのは、美鈴の娘・美々だった。美々は、前夫との間に生まれた娘であり、金太郎に特別な思いを抱いてきた少女である。そんな美々が、母を失うかもしれない極限の中で、信じがたい言葉をぶつける。
「ママが死んだら……私がお前の女房になる!!」「お前が私を愛さなくたってかまうか!!」「私が竜太と赤ちゃんを育てる!!」と。
常識で考えればむちゃくちゃな提案だが、“母を失いたくない”“それでも家族が壊れてしまうのはもっと嫌だ”――そんな必死さの果てに飛び出した覚悟なのだろう。
さらに美々は、金太郎の自己否定を真っ向から否定する。「ママは……どんな気持ちでお前と結婚したと思ってんだ……」「お前に殺されたって本望だと思って……そんぐらいの覚悟で結婚してんだぞ」と。
果たして美鈴の出産はどうなるのか。緊迫の出産を描いたシーンをぜひ、漫画で読んでほしい。























