可愛いキャラクターたちが残酷な日常を生きる問題作
昨年8月に発売された漫画『地元最高!』は、女子の日常を描く王道の人気ジャンルだが、その内容が異色かつ斬新なテーマで「イカれてる!」「沼る」と話題になった作品だ。可愛い絵柄やキャラクターとは裏腹に、暴力やクスリ、虐待や貧困などにまみれた物語が展開する。
草下氏は「漫画だから笑えたり、面白がれるものにしなければいけないけど、できるだけリアリティを求めるようしている」という。どのようにして作品づくりに関わっているのかを聞いた。
「漫画家のusagi氏とは以前から付き合いがあり、ラッパー・D.Oの書籍や私が書いた小説『半グレ』の表紙絵を頼んでいました。その彼が2021年にTwitterで『地元最高!』の連載を始めたんです。
彼はキラキラ系や爽やかさ全開の王道系女子による日常マンガではなく、田舎のリアルなアウトローな少女たちの日常を描く漫画をやりたいと言っていました。Twitterを見て“ついに始めたかー”と思いました。
1話目から十分面白かったけど、編集者としてもっと世界観を掘り下げられると直感しました。それですぐusagiさんに電話して『編集、手伝いましょうか』『お願いします』って感じで協力するようになったんです」
草下氏が実際に物語構成に関わるようになったのは、主人公格のシャネルちゃんがほのぼのとしながらも、かなりエグいものを売っている露店商の様子が描かれた6話目からだという。
「これはネーム段階では2ページでした。しかし、もう少し現場の情報がほしいと思い、モデルにしている関西地区で実際に今も開かれている“泥棒市”の様子のリアリティを強化するために1ページ増やしました。
片方だけ売られた靴や、ピカピカに磨かれた10円玉を20円で売る様子などは実際に見られるものですし、『そのクスリは遊べるけど、大事なものたくさん落としちゃうから気をつけてね』というのもusagiさんが実際に聞いた言葉です」
このモデルとなった“泥棒市”は、一般的なフリーマーケットの感覚ではあり得ない商品が売買された露店で、一昔前まで関西のある地区では高架下で大々的に行われていた。しかし今は規模を縮小し、深夜1時頃にひっそりと開店しているという。
『地元最高』の面白さはここにあり、フィクションでありながらノンフィクション的な要素が散りばめられているのだ。