「金太郎、指導する。」(集英社文庫・コミック版11巻収録)

金太郎の恐ろしい新人研修

なんと金太郎が、新入社員研修の担当になった。それだけでも不安しかないのに、『サラリーマン金太郎』第99話では、案の定とんでもない研修が始まる。

まず金太郎が新人たちに叩き込もうとするのは、ごく基本的なことだ。握手と笑顔である。新人の男をひとり壇上に呼び出し、握手を求める。だが相手は緊張してぎこちない。恥ずかしさもあって、ついへらへらしてしまう。すると金太郎は容赦なく、「ニヤけるな 俺の目を正面から見るんだ」「歯を見せて笑えっ!!」と怒鳴りつける。

さらに笑顔についても、金太郎の持論はやたら熱い。へらっと笑う新人に対して、「そんなものニヤけてるだけだ!」「その笑い顔は君の人物の気の弱さと卑屈さを相手にさらけ出している」と切り捨てたうえで、「笑い方は訓練ひとつで人の心を魅きつける有効なものになりうるんだ」と説く。

そして極めつけに飛び出すのが、「毎朝10分間出社前に笑顔の練習だ……」である。完全にパワハラである。だが、金太郎の研修はまだ終わらない。むしろここからが本番だった。

金太郎は新人たちに向かって、とんでもない一言を放つ。「お前たちに最初に書いておいてもらいたいものがある」「……辞表だ」と。

理由は二つある。ひとつは、生活を人質に取られて我慢しながら働くのはつまらないし、仕事がつまらなければ生きている時間の無駄遣いだから、その気で仕事をやるべきだということ。

もうひとつは、捨て身でないとこれからのサラリーマンはやっていけないから、辞表をポケットに入れて思いっきり攻めるスタイルで行くべきだということだ。

もちろん、新人たちを本気で辞めさせたいわけではない。「研修期間中ひとりでもリタイアしたら俺の負けだ。会社を辞めるよ」と、自分の進退まで賭けてしまうのである。

今の時代、こんな新人研修があったら、たちまちSNSで拡散され、ニュースにもなりそうだ。いや、この時代ですら、さすがに周囲は慌てている。では肝心の新人たちは、この無茶苦茶な男を前にどう反応するのか。そこはぜひ漫画で読んでほしい。