「金太郎、出向する。」(集英社文庫・コミック版10巻収録)

荒れ果てた部署に飛ばされた金太郎

会社でやる気のないヤバい連中ばかりの部署に飛ばされたら、あなたはどうするだろうか。一緒になって腐るのか。見切りをつけて辞めるのか。

『サラリーマン金太郎』第92話で描かれるのは、読んでいるだけで息が詰まりそうになるような職場である。

会社で暴行事件を起こし、処分として出向を命じられた金太郎。新しい配属先「株式会社・YMTランド」にいるのは、まともに仕事をしているようにはまったく見えない人間たちばかりだ。

仕事中に釣り竿を手放さない男、将棋盤から離れない男、昼間から寝っぱなしの男、下品な冗談ばかり飛ばす男、冷めきった目でそれを見ている女社員。誰もまともに働いていない。

会社というより、荒れた休憩所のような空気である。そもそもオフィス全体が薄汚れていて、いるだけでやる気を吸い取られそうだ。

だが、彼らがただ怠けているわけではないのが、この回のリアルなところでもある。彼らはみな、会社に見捨てられ、首になるのを待っている人間たちだという。バブル崩壊のなかで、本体の会社を延命させるために切り離された“ダミー会社”に集められた、いわば沈む船の乗組員なのである。

生々しいのは、彼らが完全に会社員をやめているわけではないことだ。仕事はないのに、全員が定時まできっちり残る。そして五時になれば一斉に帰る。だが、どこかで時間をつぶしてから遅くに帰り、家ではこれまで通り働いている顔だけは保とうとする……。

そんな腐った空気の中で、金太郎だけは目の輝きを失っていない。「この職場は俺が考え事をじっくりやれそうな気がする……」「それをためしてみたいんだ」と言うのだ。

吹きだまりのように腐りきった職場に放り込まれた金太郎が、ここから何を始めるのか。続きは漫画で確かめてほしい。