トランプ氏が見せた強い怒りと嫌悪感による凄まじいまでの形相

おなじみになった真っ赤なキャップを被り、軽快な調子で演説していたトランプ氏。“パーン”と乾いた音が響いた瞬間、右肩をわずかに上げた。おそらく耳元を弾がすり抜けたのではないだろうか。

2発目の銃声がなると、トランプ氏は瞬間的に右手で右耳を触った。だがすぐに手を離して首をすくめる。たて続けに銃声が響くと、演台にかがむようにしゃがみ込んだ。何人もの警護官が身をかがめてトランプ氏に駆け寄り、次々と覆いかぶさっていく。

その時の映像や写真はすぐに報じられた。トランプ氏の頬には、撃たれた右耳からの血が伝っている。痛みと驚きからか、うつむいた横顔はわずかに歪んでいるように見えるが、その表情に恐怖は見られない。


だが警護官らに支えられ、抱えられてゆっくり立ち上がった時は、眉根に力が入り、両方の眉が引き寄せられていた。額にはほとんどシワが寄らず、唇は薄く横に広がっている。身体を起こすことで、命を脅かされたことに対する恐怖が蘇ったのだろう。

拳をつきあげるトランプ氏(写真/共同通信)
拳をつきあげるトランプ氏(写真/共同通信)
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だが立ち上がったトランプ氏は、警護官に「靴を取らせてくれ」と言っている。しゃがみ込んだ際、靴が脱げたようだ。警護官らに取り囲まれながら靴を履く。すでに容疑者は制圧され、危険がないと判断されていたようだが、本来は靴など気にせず逃げ出すような場面である。

警護官らの間からトランプ氏の顔がのぞく。彼の視線の先には大勢の支援者たちがいた。すると彼は、移動しようとする警護官らを「待て、待て」と止めたのだ。

途端にトランプ氏の表情が一変する。眉根がグッと寄せられ、眉が引き下げられ目の上が狭くなる。唇がしっかりと結ばれ、口の下がふくらんだ。恐怖や驚きの表情は、一瞬にして怒りに変わった。そしてトランプ氏は右手の拳を突き上げた。支援者たちから歓声と拍手が上がる。

さらに鼻にシワが寄り、唇が持ち上がる。銃撃という卑劣な手段に対する嫌悪感を感じのだろう。歯をむき出すように何かを叫びながら、拳を何度も突き上げた。それは彼が強運の持ち主であり、自分は屈しない、負けないと印象付けることになった。

抱えられながらも拳を掲げて、自分の足で壇上を降りていくトランプ氏。その視線は足元よりも、目の前にいる支援者たちの方を見ていた。車に乗る際も支援者の方に向けて、右手の拳を高く突き上げた。その間わずか2分強。

頬に流れる血を拭うことなく、拳を高く掲げるトランプ氏と、背後にはためくアメリカ国旗。強いアメリカを象徴するような写真が次々と報じられていく。この出来事により、これまでの彼にかかわる有罪判決などのマイナス要素は、ほとんど問題視されなくなるだろう。

人々の記憶が一瞬にして塗り替えられてしまったのだ。米起業家のイーロン・マスク氏は自身のXで、「米国でこのようなタフな候補者はセオドア・ルーズベルト以来だ」とトランプ氏支持を公式に表明した。

イーロンマスク氏の投稿
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