実社会での労働組合の現在地
中畑 そうだね。歴史は知っていて欲しいね。今、労働組合って実社会の中でどんな立ち位置にあるの?
大椿 労働組合の組織率は 16% という割合で決して多くはありません。これは組合側にも問題があって、大きなナショナルセンターは本当に労働者のために戦っているのかと思うところがあります。
私のような非正規労働者からすると、4割も非正規労働者がいるのは深刻です。実態は労働者なのに、フリーランス、個人事業主にどんどん置き換えられていっています。野球選手たちがそこに労働者性があったように同じく労働者性があるのにそれ包括できるような制度がないんです。
国は多様な働き方とか自由な働き方とかそういう言葉に置き換えているんですけど、私は世の中が悪くなったのは非正規労働者を増やし続けてきたからだと確信を持っています。日本人がどんどん貧乏になったり、子供を産まなくなってきていますが、非正規労働者をこんなに増やしたら当たり前じゃないですか。貧困はどんどん広がります。
中畑 それは怖いことだよね。
大椿 やっぱりこの深刻な問題が今、国の重要課題になっていないなというのが、 2 年 4 ヶ月の短い間でしたけど、私が国会に行って強く感じたことでした。
雇用の安定を確保することが、私はこの国がやるべき最優先の課題だって思っています。非正規雇用の人たちの雇用は統一契約書に近いですよ。
中畑 俺たちの世界と一緒だね。言葉では個人事業主で社長扱いたけど、自由の無い中身の薄い社長で。
大椿 そうそう、本来は正社員として雇用すべき仕事が、非正規、個人事業主に置き換えられています。何の自由も権限もない。雇う側の都合でいつでも切られますし、とりわけ個人事業主は労働法の外側に置かれています。理不尽な事があっても、闘う方法すら奪われています。
かつては安定していたから多くの人が住宅ローンなども組めたけれど、今は無理です。今、公務員も例えば区役所で働いている人たちの 4 割が非正規労働者なんですよ。直接雇用の会計年度任用職員と言って1 年ごとの不安定な契約の人たちのことが問題になってます。
中畑 それはまるでプロ野球の俺たちみたいな世界だね。
大椿 プロ野球選手会が労組にしたっていうのは、他の人たちにも使える手法だなと思っているんです。私の友達で歌舞伎の大部屋俳優をやっている人がいるんです。所属は様々ありますが、基本は松竹からの給料で、これが安いんですよ。
要するに彼らも個人事業主。事務所から今月はこういう役をやれと言われてやる。まさに労働者性があるわけですよね。彼らも自分たちの労働環境に不満を持ちながらも何もすることができないまま、舞台に立ちたいんだったらここにいるしかないという。私はずっとプロ野球選手会を真似て組合作ったらと言い続けてたんですよ。
中畑 お手本の教科書にされたというじゃないけど、ゴルフ界とかサッカー界、他のスポーツの選手たちからもどうやって組合作ったんですか?教えて下さい、という相談は結構受けたよ。
あと審判も組合に入れて下さいと言って来た。裏方の人ほど組合はあってしかるべきだと思うね。音楽家のユニオンもあったね。
大椿 そうですよね。俳優の世界も小栗旬さんが労働組合を作りたいと思っているみたいな話が、報道で出ては消えてって感じですね。中畑さんならどうまとめていかれますか。
中畑 俳優の世界はまとめるのが大変だろうね。皆、プライドが高そうだから。自分なら、まずトップクラスにいる北大路欣也さんとかをまず説得しに行くかな。こういう世界を作りたいんです、みんなで協力し合う世界にしたいんで、ぜひお願いします、と。
プロ野球選手会も王さん、長嶋さんのON2人がタッグ組んで動いてくれたら、もっと早く成立していたと思う。俺も「お二人が賛同してくれたら、必ず成功するからお願いします」と直訴に行ったんだけど、ダメだった。まだまだ上の世界に弱い人たちだったからね。
「キヨシ、まだ時期尚早だろう」ってやんわり断られて、だったらと自分でやりだしたんだけど。本当はその世界のトップの人が松明を掲げてくれると動き出すよね。
大椿 そうですね。大切ですね。今日は本当にお会いできて貴重なお話が聞けて良かったです。
中畑 いえいえ、お疲れさまでした。
構成/木村元彦













