世界標準からかけ離れた、日本のヘンな常識
欧米でも、会社の法務部で働いているからといって、全員が弁護士資格を持っているわけではないが、大学の法学部を出ているなど、なんらかの専門教育を受けていることが当然の前提になっている。
そして、いまの仕事が面白くなかったり、上司や同僚とうまくいかなかったり、部門の業績が悪いから人員を減らしたいといわれたときに、「他部署に異動させてください」などといわない。自分の専門を活かしてほかの会社の法務部に転職するか、弁護士事務所のスタッフとして働く。いちど専門を決めたら、ほとんどの場合、それを変えることなく場所(職場)を移っていくのだ。
それに対して、サラリーマンの働き方はぜんぜん違う。
まず、日本の会社は新卒採用のときに大学での専門教育をほとんど気にしないので、文学部や教育学部出身者がごくふつうに法務や経理の仕事をしている。そしてこの人たちは、自分をスペシャリストだと思っていないから、何年かすると営業や総務などまったく違う部署に異動する。日本のサラリーマンは、いちど会社を決めたら、それを変えることなく、会社内で別の部署に移っていくのだ。
日本人はこれを当たり前だと思っているが、外国人が聞いたら腰を抜かすほどびっくりする。
欧米では、キャリアビルディングとは、転職を繰り返すことで経験を積み、自分の専門性(キャリア)を高めていくことだ。それに対して日本では、キャリアは会社のなかでの地位のことで、キャリアビルディングは出世の方法だと思われている。日本人の働き方はグローバルスタンダード(世界標準)からかけ離れた、ものすごくヘンなことになっているのだ。