「職種」ではなく、「会社名」が日本の慣習

日本でも、勤務医に「お仕事は?」と訊くと、「内科医です」とか「小児科医です」と専門を答える。「どこの病院ですか?」と重ねて訊いてはじめて、病院名を教えてくれるだろう。最初に病院名をいうと(「〇×病院で働いています」)、病院事務だと思われるのだ。

賢い若者だけが気づいている「絶滅危惧種サラリーマン」という日本的雇用形態の限界_2

海外では、すべてのスペシャリストがこれと同じで、「自分はなにを専門にしているのか」を真っ先に伝える。新聞記者は「ジャーナリスト」だし、テレビ局で働いていれば(たとえば)「ドラマのディレクター」だ。だが日本で職業を訊くと、ほぼ100パーセント、「朝日新聞です」とか「NHKです」などの答えが返ってくる。先に専門をいうと、「フリーのジャーナリスト」「フリーのディレクター」の意味になってしまうのだ。

このように日本では、専門と会社の順序が世界とはまったく逆になっている。それは、「どの会社に所属しているか」がものすごく重要だからだ。

開業医と勤務医がいるように、スペシャリストである医者は、自営業者になるか組織に所属するかを自分で決めている。医者のなかには一般企業で社員の健康管理を任される人もいて、産業医と呼ばれている。

産業医は会社に所属しているが、人事異動で営業や経理に異動することはない。ここまでは当たり前だと思うだろうが、海外ではすべてのスペシャリストが産業医と同じ働き方をしていることを理解できるだろうか。