新卒から40年も会社に「監禁」される日本
ついこのあいだまで、日本社会では「日本的雇用が日本人(男だけ)を幸福にしてきた」と信じられてきた。こうして右も左も「グローバリズムから日本的雇用を守れ」と大合唱していたのだが、最近になってこの人たちが黙るようになった。都合の悪い事実がどんどん明らかになってきたからだ。
ひとつは、さまざまな国際調査で、日本のサラリーマンは世界でいちばん会社が嫌いで、仕事を憎んでいることがわかったこと。それも小泉政権の「ネオリベ」改革以降の話ではなく、日本企業が世界を席巻していたバブル全盛期の1980年代ですら、日本のサラリーマンよりアメリカの労働者の方が自分の仕事に誇りをもち、友人にいまの会社を勧めたいと思い、「もういちど生まれ変わっても同じ仕事をしたい」と答えていた。日本のサラリーマンが仕事を憎むのは、新卒でたまたま入った会社に40年も「監禁」されるからだろう。
それに追い打ちをかけたのが、一人当たりの労働者がどれくらい利益をあげたかを示す労働生産性の国際比較だ。日本のサラリーマンは長時間労働とサービス残業で過労死するほど働いているにもかかわらず、アメリカの労働者の6割程度しか稼いでおらず、主要先進7カ国(G7)の中では1970年以降、約50年間にわたって最下位の状況が続いている。
もうひとつは、日本的雇用が重層的な「差別」であることが隠せなくなったこと。メンバーシップ型ではメンバー(正社員)かどうかで「身分」が決まり、「正社員」と「非正規」だけでなく、「親会社」と「子会社」、海外の日本法人での「本社採用」と「現地採用」など、さまざまなところで「身分」による待遇の差が生じている。