ポジティブに挑戦してみたれば…

この男性の場合は経済的な理由というより、退職後のヒマつぶしにクラウドソーシングに登録していて、面白そうな案件だったから引き受けてみた、ということでした。若い起業家は自分の幸運が信じられず、その場で頭を下げ、三顧の礼で顧問になってもらったそうです。

最後は出版関係の知人から聞いた話です。

その出版社では早期退職の勧奨を頻繁に行なっていて、経営陣と折り合いが悪かった男性社員が50代前半で退職しました。これからどうするのかみんな心配しましたが、クラシック音楽が好きだったこともあって、音楽関係の募集に片っ端から応募したところ、関東の地方都市の小さなコンサートホールで働くことになったといいます。

ところがそれから5年もしないうちに、2度の転職を経て、東京の大きなコンサートホールの広報責任者に迎え入れられたのです。

その男性は雑誌の編集をしていたので、コンサートのチラシやパンフレットの制作はお手のものです。それが評価されたのかと思ったのですが、理由はほかのところにありました。
男性が友人たちに語ったところによると、音楽業界は(自称)芸術家ばかりで、ビジネス感覚のある人間はほとんどいないのだといいます。

予算を管理したり、さまざまな部門のスタッフを動かしてものごとを進めるという、雑誌づくりなら当たり前のことでも、それができるだけで周囲から驚かれます。その仕事ぶりが評判になって、「うちで働かないか」という誘いが次々と来るようになり、あっという間にキャリアアップしていったのだそうです。

どうでしょう? 「女がそんなに稼げるわけはない」とか「高齢者にそんな仕事があるわけがない」とかいっていないで、ポジティブに挑戦してみた方が人生は楽しいのではないでしょうか。

前編「専業主婦は2億円損をする!? 前近代的な性別分業が夫の問題でもある理由」はこちらから

『不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0』(PHP研究所)
橘玲
無職の50歳が初就労で時給3000円!? 生涯現役社会で稼ぐ高齢者3人に学ぶ_1
2022年3月18日
968円(税込)
文庫 336ページ
ISBN:978- 4-569-90208-1
人生100年時代に、日本人の働き方はどうシフトすべきか?

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『働き方2.0vs4.0』を改題し、文庫版だけの「特別寄稿」を加えて、再編集。
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