円安相場で恩恵を受けているのは外国人投資家

日本銀行には法律で保障された独立性がある。しかし現実には、政府が追加利上げに慎重な姿勢を示し続ければ、市場は「利上げは先送りされる」と判断する。法律と市場心理は必ずしも一致しないのである。

私は、今回の骨太の方針案が市場へ与えた最大の影響はここにあると考えている。政府が直接、日本銀行へ命令しているわけではない。

しかし金融政策への期待や思惑を市場へ発信するだけで、結果として円安を後押しし、日本株への資金流入を促す効果を持ってしまう。市場参加者はそこまで織り込んで売買しているのである。

その恩恵を最も受けているのは外国人投資家だ。安い円を買い、その円で日本株を買う。株価が上昇すればキャピタルゲインを得られる。さらに将来、円が反転すれば、今度は為替差益まで手に入る。

安い円、安い日本株、そして将来の為替益。2重、3重の利益を狙える市場は世界を見渡してもそう多くはない。東京市場の売買の大半を外国人投資家が占めるようになった背景には、この構図がある。

NISA、円安、AI・半導体支援で生み出した株高

日経平均は最高値だが…
日経平均は最高値だが…

一方、日本人は円で給料を受け取り、円で生活し、円で老後資金を蓄えている。円の価値が下がるということは、そのまま生活水準の低下につながる。

株価だけを見れば景気が良いように見えるかもしれない。しかし海外旅行へ行けばホテル代や食事代の高さに驚き、輸入品は次々と値上がりし、食料やエネルギー価格は家計を圧迫する。

円建ての日経平均株価が史上最高値を更新しても、それだけで国民が豊かになったとは言えないのである。

それにもかかわらず、政府は新NISAを旗印に「貯蓄から投資へ」を強力に推し進めている。新NISAは本来、国民の長期的な資産形成を支援する制度である。

長期・積立・分散投資そのものを否定するつもりはない。しかし私は、それだけではなかったと思っている。高市政権はテレビCMまで使って新NISAを強烈に推進し、国民の資金を株式市場へ呼び込んだ。

そして同時に、円安を容認し、AI・半導体関連企業には様々な形で補助金を投じ、市場には「日本株はまだ上がる」という空気をつくり出した。

私は新NISA、円安、AI・半導体支援、この3つが重なったことによって、今回の日経平均株価の急騰が生まれたと見ている。

同時に政権は日経平均株価を内閣支持率の重要な指標の1つと考えているように見えてならない。