見送られる高齢者負担、増え続ける現役世代の重圧
日本の少子化が、かつての予測を大幅に上回るスピードで進行している。朝日新聞の23日の報道によると、2025年に国内で生まれる日本人の子どもは、統計開始以来、過去最少の66万8千人程度にとどまる見通しだ。
これは、国立社会保障・人口問題研究所が2023年に公表した将来推計よりも16年も早いペースで少子化が進んでいることを意味する。本来、出生数が66万人台まで落ち込むのは2041年と予測されていたが、現実はその想定を遥かに超える深刻な状況にある。
この危機的な状況下でも、政府の政策は依然として高齢者への配慮に重きを置いている。政府は、介護サービス利用時の自己負担を1割から2割へ引き上げる対象の拡大について、年内の決定を見送る方針を固めた。
現在、利用者の91.8%が1割負担であり、対象を広げることで最大約220億円の給付費抑制が可能と試算されていたが、高齢者の生活への影響を優先した形だ。
介護保険の財源の大部分は公費(税金)と40歳以上の現役世代も支払う保険料で賄われている。高齢者自身がもう少し多く負担すべきではという議論が背景にあったにもかかわらず、先送りとなった。
その一方で、現役世代への負担増は着実に進んでいる。医療費の自己負担がある一定額を超えた場合にその超過分が給付される「高額療養費制度」の見直し案では、月の自己負担額を最大で38%引き上げる検討案が明らかになった。
高年収帯だけでなく年収約650万〜770万円といった層でも、月ごとの上限額が現行の約8万円から約11万円へと引き上げられる。
この影響を受けるのは相対的に収入の多い現役世代である。そしてもともと高額療養費制度自体も、高齢者だけが利用できる「外来特例」が存在したり、高齢者がその他世代よりも上限額が低いなど、優遇されているという側面があっただけにSNSでは大きな反発を生んでいる。
そもそも、多額の医療費がかかってしまったときの「保険」である高額療養費に手を付けるより先に、高齢者の窓口負担を現役世代と同じ負担割合にする議論をすべきではないだろうか。
健康保険の財政健全化への影響も、高額療養費制度より桁違いに大きい。本来やるべきことに目を背け、現役世代の「安心」を減らすのは保険としての主旨を逸脱している。













