協力者わり出し、3人に“同時ガサ入れ”計画
Aさんは3月12日、斎藤知事や側近による公金不正支出や選挙違反、日常的なパワハラやタカリなど7項目の違法行為疑惑を書いた匿名の告発文書を県議や記者ら10人に郵送した。
3月20日に文書の存在を知った斎藤知事は、翌21日には“牛タン倶楽部”と陰で呼ばれる側近グループの片山安孝副知事(7月末に辞任)と井ノ本知明県民生活部長(4月に総務部長昇進後、更迭)、原田剛治産業労働部長、小橋浩一総務部長(4月に理事昇進後、更迭)の4人を集め調査を指示。その後、小橋氏はAさんのメールの解析を人事課に命じている。
「これら県幹部はメールの中に告発文書の骨子があるのを見つけ、Aさんに(攻撃の)狙いを定めました。ただ、ほかにも協力者がいると疑い“同時ガサ入れ”を試みます」(県関係者)
関係者によると、牛タン倶楽部は「庁内調査手順」という文書を作成。3班に分かれ、Aさんとともに、仲が良かった県職員のXさん、Yさんの計3人の職場に3月25日午前に同時に踏みこむ計画を立てる。当日、Aさんがいた西播磨県民局長室に入ったのが片山副知事ら2人だった。その際の約50分間のやり取りの音声が残っている。
「片山副知事が『誰に聞いたんや?』と詰問しましたが、Aさんは『言えません』『みんな噂してますよ』と、情報元を明かすことを頑なに拒んでいました。すると片山副知事は『噂をまとめたということやな』と、勝手に整理しています。
ただ、この時の片山知事の本当の狙いは、協力者の割り出しでした。人事ラインの幹部が『こんな告発は絶対一人ではできひん』と主張したため、拡散させた仲間がいると思っていたようです。
結局、Aさんのパソコンから告発文書を郵送した10人の宛名ラベルのファイルが出てきたため、“単独犯行”との見方に落ち着いたんです。実際にXさんの職場にはガサが入りましたが、パソコンの押収まではありませんでした。Yさんは職場に不在でその日は調べは受けていません」(県関係者)
「噂をまとめた」との片山副知事の勝手な解釈を聞いた斎藤知事は、翌々日の3月27日の記者会見でAさんを「嘘八百」「公務員失格」と罵倒。文書の内容が次々と事実と判明している今も「Aさんが噂話を集めて書いたと認めたので、文書には真実相当性がない。そのためAさんは公益通報者として保護される対象ではなく、懲戒処分は適正だった」との趣旨の主張を続けている。