繰り返される攻撃と、口実のための嘘

三牧聖子(以下、三牧) 今、重要な論点がたくさん出ました。このお話をしている本日、2023年12月22日の時点でガザ市民の犠牲は2万人超、さらには220万人のうちほとんどの住民が強制移住(国内避難民の)状態にあります。ただ、瓦礫の下にも相当な数の方が亡くなっているだろうということで、犠牲者の数は、2万人でも少な過ぎるのではないかというような見方もあります。

イスラエルのガザにおける軍事作戦は、現代史における最短のペースで最悪の破壊をもたらしつつあります。

AP通信によれば、ガザでは戦闘開始から2カ月あまりで、2012年から2016年にかけてシリアのアレッポで行なわれた破壊、2022年にウクライナに侵攻したロシア軍によって包囲されたマリウポリの破壊、第二次世界大戦中の連合国によるドイツ空爆以上の烈度の破壊がもたらされたといいます。

2024年4月25日 ガザ南部ラファの街 撮影Anas-Mohammed
2024年4月25日 ガザ南部ラファの街 撮影Anas-Mohammed

また、2014年から2017年にかけ、イラクでアメリカ主導で行なわれたテロ組織「イスラム国」討伐作戦は、歴史上でもっとも激しい都市空爆の一つと考えられていますが、この時、アメリカ主導の連合軍がイラク全土で約1万4000回の空爆を行なったのに対し、ガザでは2カ月あまりで2万9000回以上の空爆が行なわれました。

特筆すべきは子どもの犠牲の多さです。2023年11月上旬の時点で、4500人を超えました。国連の調査によれば、過去数年、世界各地の紛争で1年間に犠牲となる子どもの数は2000人超から4000人超とされています。つまりガザでは1カ月あまりで、世界で1年間に犠牲になる数より多くの子どもの犠牲者が生まれてしまったことになります。

これらのガザ保健省が出す犠牲者数については、世界保健機関(WHO)などによっても信頼に足るものと認められています。ヨーロッパの人権団体が出している数字も、ガザの保健省が出している数字と、おおむね合致しています。

しかしバイデン大統領は「パレスチナ側が出してきた数字は信用できない」と、これまでに複数回、ガザ保健省が出した犠牲者数に疑いを投げかけてきました。これがユダヤ人の死者であった場合、死者の数に疑問を呈することなど許されないはずでしょう。

ホロコーストを否定することになってしまいかねない。でもパレスチナ人に対してはそれを平気でやってしまうわけです。2023年10月下旬、バイデン大統領が「ガザ保健省が発表する犠牲者数は信用できない」と発言した際には、ガザ保健省が抗議の意味を込めて、数千人の犠牲者の氏名一覧を公表したこともありました。

バイデン大統領は重要な局面で、本来、慎重に事実確認を行なわなければならないことについて、パレスチナ側の情報は信頼できないとして、イスラエル側の発表へ即座に支持を与えてきました。

10月17日、バイデン大統領がイスラエルを訪問しようとした際、ガザ北部のアルアハリ病院が爆破され、ガザの保健省は死者が471人にのぼったと発表しました。翌日、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談したバイデン大統領は、爆発への関与を否定するイスラエルの主張について、すぐさま支持を表明しました。

確かにその後、調査が進み、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体も、病院の爆破はパレスチナの過激派のロケット弾の誤射が原因である可能性が高いとの見立てを示しています。しかしそれは、爆破直後にすぐ判断できることではなかったはずです。

内藤 そうですね。