「地方で生きる」ことが革命的に変わった

「見知らぬ土地でも身軽に引っ越し、やりたいことに今、チャレンジする行動力は、渡辺さんのような新しい世代に特有のものではないだろうか」

こう話してくれたのは、NHK『いいいじゅー‼』番組内で渡辺さん一家の移住物語を制作、放送した、鈴木真美さん(NHKエンタープライズ 制作本部 国際番組部 エグゼクティブ・プロデューサー)だ。

「最初に番組の企画が出たとき、移住といったら定年した夫婦が田舎で家庭菜園でもやりながら、最後の人生をのんびり暮らす、というような家族像をイメージしていました。しかし制作を始めて、こうした価値観とはまったく違う若い世代が現れていることに驚きました」

NHK『いいいじゅー‼』番組内で紹介されたときの渡辺雅美さん
NHK『いいいじゅー‼』番組内で紹介されたときの渡辺雅美さん
すべての画像を見る

鈴木さんによれば、移住を実行する若い世代の特徴は三つ。

①自分の好きなこと、仕事をしたい。地方にもやりたい仕事はたくさん眠っている。

②リモートワークに象徴されるネット社会に生きているので、地方にいても世間から離れるわけではない。

③家族と過ごす時間を確保し、自然の中でのびのび子育てしたい。

このような価値観を持つ若者世代が現れたことで、「地方で生きる」ことが革命的に変わったのだという。東京のような大消費圏に住んでいるメリットがもうあまりなくなったのだと。

筆者も何組かの移住家族の取材を続ける中で、同じようなことを感じていた。

上士幌町に来てから家族で過ごす時間も増えたという渡辺さん一家。住んでみたい土地で、地域に貢献しながら自分たちの子育ても楽しむ。まるで旅人のように軽やかに町を訪れ、ママと赤ちゃんに伴走する雅美さんの奮闘ぶりは、確かに新しい世代の移住スタイルだ。

取材・文/中島早苗 
NHK『いいいじゅー‼』(総合 毎週火曜午後0時20分~放送)