もしも将来私がここを離れることがあったら…

雅美さんは、「産後ケア事業」にも力を入れている。産後概ね1年未満のママと赤ちゃんに対して、産後の健康チェックや授乳相談、レスパイト(育児の一休みや息抜き)などのケアをする。

町の助成を受けられる上士幌町民であれば、例えばランチ付きのデイサービス型でも1回2,800円と、利用しやすい料金だ。

「赤ちゃんってかわいいんですけど、生まれたら昼も夜もなく24時間欲求を全力でぶつけてくるんですね。会話ができないその相手の欲求にこたえて、ママは100%GIVEをし続けるので、常に寝不足だし、心の中の『優しさタンク』が枯れていく感覚がある。

そんなときに周りの人に気遣ってもらえると、またタンクが満たされるんです。誰かのちょっとした声掛け、例えば『大変だよね』の一言でも、敏感に『優しくしてもらった!』とうれしくなって、また頑張れる。そういう優しさの循環が、助産院から生まれるといいなと思って生きています」

「産後ケア事業(レスパイト・デイサービス型)」で手作りランチをいただきながら、ホッと一息つく利用者ママとそれを見守る雅美さん
「産後ケア事業(レスパイト・デイサービス型)」で手作りランチをいただきながら、ホッと一息つく利用者ママとそれを見守る雅美さん

そんな雅美さんに、将来についての考えも聞いてみた。

「今、小さな息子たちを育てるのにベストな選択肢としてここに住んでいますが、もしかするともっと大きくなったときに、進学といった学習面を考え、別の選択をするときがくるかもしれません。あるいは将来、親の介護で岡山に戻る可能性もなくはないですし。

岡山のことも、離れて初めてよさがわかった面があります。毎日晴れているとか、実家が近いのは有難いものだとか、当たり前に身近にあった地元のよさは、離れずに住んでいたら気づかなかったかもしれません」

上士幌町の雄大な自然の中でのんびり過ごす息子さんたち
上士幌町の雄大な自然の中でのんびり過ごす息子さんたち

そのときベストな動きができるよう、仕事に関しても地域で繋がりをつくっているという。

「SNSで、北海道内の助産師さん仲間と繋がっていて、ときどきは会って情報交換しています。もしも将来私がここを離れることがあったら、この助産院を継いでくれる、助産師ファミリーを募ろうと思っています。のびのびしたこの環境で子育てしたい家族は必ずいると思いますので」