バブル期には「別荘ライフ」だったが、それとは異なる二拠点生活
日本では古くは明治期から、記憶に新しいところではバブル期にも二拠点生活と言える「別荘ライフ」を楽しむ人たちがいた。
昔の別荘ライフは、主に富裕層のものだった。別荘地に高額な物件を買い、定年後に家庭菜園などを楽しんでのんびり過ごす…そんなイメージだ。
近年の二拠点生活はそれとはちょっと違う。民泊の合法化や空家の増加といった社会背景の変化により、二拠点目の選択肢が増えたのだ。
地方物件を賃貸する、古い家を購入し、使わないときは民泊として貸し出す、リーズナブルな施設に定期的に泊まるなど、昔よりずっと気軽に身軽に、二拠点生活に挑戦できるようになった。
今回ご紹介するのは、平日は東京都文京区、主に週末は熱海の温泉付きマンションで過ごすカナミ(仮名・57)とユウイチ(仮名・58)夫妻の例だ。
都心で会社員として共働きを続け、23歳になる長男を育ててきた二人は、20数年前に購入した世田谷区の78㎡のマンション住まいだった。
変化が起きたのは2020年。コロナ禍で急に在宅勤務が始まってからだ。以前からも漠然と「定年を迎えるころには、海の見えるところに住みたいね」と話したことはあったが、リモートワークの世の中になり、夢が現実味を帯びる。
夫妻は、東京住まいにこだわる意味がなくなってきたと感じていた。定年まであと数年あるが、将来の移住も視野に、海の見えるもう一つの住まいを探してみようと思った。