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穀物の生産・消費長期予測

第2次世界大戦が終わってある程度の落ち着きを取り戻すと、宇宙・医療・防災・食品加工・アパレル・半導体・自動車・航空機・IT・映像・資源探索・軍事などの基礎的な分野で、人類は過去を一気に引き離すさまざまな革新を成し遂げてきた。

しかしいまだ成し遂げられていないことが、人類には少なくとも、2つ残っている。1つはだれも飢えることのない日常を送ることができる社会の実現であり、もう1つが兵器を無用の長物として各国が捨て場所探しに協力しあえるような平和の実現である。

この2つには互いに大いに関連するところもある。飢える国民は農工間格差、内戦や国家間の戦争や紛争の犠牲者であることが多いからである。ただし一見なにもなさそうな国にある飢餓は、その国自身の責任か自然地理的な事情による場合が多い。

いずれであるかにかかわらず、人類のすべてが飢えの恐怖から解放されることが史上一度もないままに、国家間対立・気候危機・人口増加・世界的に広がる農業担い手の減少と、ますます食料事情が悪化する時代にあるのが現実である。

21世紀末までの長期間に世界の穀物生産と穀物需要そして世界に生まれる飢餓人口をシミュレーションし、その背景を紐解いてみることにしよう。

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穀物生産量を長期的に予測することは生やさしいことではない

穀物生産量を長期的に予測することは生やさしいことではない。気候変動・自然災害・穀物作付面積・灌漑の施設整備・品種改良・肥料や農薬の変化・栽培方法の変化・消費者の嗜好変化・食生活の変化・所得状況など多角的な要因(専門語では説明変数などという)が関係してくるからである。

長期予測を難しくしている理由は、このように考慮しなければならない要因が多いためだけでなく、それぞれの要因自体を動かすさまざまな小さな要因が幾重にもくっついており、数値や変化をつかむことがとても難しいからである。

こうした複雑な要因を考慮して膨大な数の方程式(専門語で重回帰分析という場合もある)をつくり上げ、あとは数値を当てはめてコンピュータに任せて計算をするのが予測方法の1つで、このような方法を使えばいかにも理論的なように目に映る。

しかし本書はこのような方法ではなく、1つひとつの項目(生産量・飢餓人口など)は過去の動向を重視し、今後の客観情勢を勘案して行なうアナログ予測の手を使っている。

その理由の1つは、筆者も重回帰分析くらいはできるので、実際、試してはみたものの、過去数十年間の実績値を当てはめて試算しても、とんでもない数字をはじき出すだけだったからである。入梅の時期予報すらはずす最近の天気予報と同じとはいわないが、コンピュータ頼みには限界がある。