SDGsの目標のひとつ―女性の教育水準と結婚年齢
国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを図る」(目標5)を掲げています。
エンパワーメントとは、潜在能力を引き出し、その力を発揮できるような労働的・社会的な環境を整えるという意味です。性差別をなくし、女性の地位を向上させることは、貧困や飢餓を脱し、人口爆発を抑制することにもつながるはずですが、依然として厳しい状況に置かれた女性は少なくないようです。
図表5-1は、世界の非識字者(文字が読めない人)の数と男女比を表した資料です。最も非識字者人口が多いインドは約2億6000万人(15歳以上)で、15歳以上の人口にしめる非識字者の割合は約30.7%です。そのうち、女性が占める割合が55.5%と、男性よりも高くなっています。
非識字者の人口の上位19カ国のうち、7カ国で女性の割合が男性を上回っています。
図表5-2は、女性の前期中等教育の修了率です。中学校卒業を多くの国が義務教育としています。100%に近い国が多い中、アフリカ諸国を中心に、非常に低い値が出ています。前期中等教育どころか、読み書きの基本となる初等教育すらもまともに受けられない状況にある女性たちが特定の地域に集中しています。
インドの女性の前期中等教育修了率は85.8%と比較的高い値が出ていますが、同国の当該学齢人口(女子)が3172万人(2018年)ですので、単純計算して約450万人の女子が、中学校すら卒業していないことになります。これは、修了率が最低のシエラレオネ(約21万人)の21倍に達します。
修了率が低いベニン(約21万人)、マダガスカル(約37万人)よりも、パキスタン(51.8%/約165万人)、アフガニスタン(50.6%/約37万人)など南アジアの国の方が、未就学の女子の数が多くなっています。
図表5-3は、世界保健機関(WHO)がまとめた、途上国の女性の結婚年齢に関する調査の結果です。調査年(2010〜17年:国によって違いあり)の20〜22歳の女性を対象に、結婚した年齢を尋ね、全体に占める割合を求めました。
非識字率の高い国、前期中等教育修了率が低い国と同様に、アフリカ諸国や南アジアの国々の結婚年齢が低いことがわかります。日本の中学生の年代で既に結婚し、農作業や家事労働に日々を費やしている子どもが3割近くいる国がある現状は、「女性のエンパワーメント」と大いにかけ離れていると言わざるを得ません。
貧しさゆえに学校に行けない、子どもを早く結婚させざるを得ないという状況を脱するためには、国際的な支援や人的・経済的な援助が不可欠で、一定の教育水準を備えた労働力が必要です。男性・女性に関係なく、向学心を持った若者に学びの機会を保証し、望む進路を実現できるような社会的な環境を整えていくことは、当該の国だけでなく、世界全体の利益になるはずです。