環境や手間に依存せず楽しめる、菓子の原点が“アメ”

アメはその甘さを唾液で溶かして味わい飲み込む、非常にシンプルで、逆に言えば食感に面白みがあるわけでもない「地味な菓子」だ。

しかし、だからこそ、歯の未成熟な子どもでも親しめ、他の菓子に比べて安価で圧倒的に長時間の口福を与えてくれた。

今回、この原稿を書くために大量のアメを購入し、絶対に食べきれないだろうな、と思っていたのだが、仕事をしながら長時間口を退屈させないことで、意外にもひょいひょい食べてしまっている。

シンプルであるがゆえ、環境や手間に依存せず楽しめる菓子の原点。それがアメだったのだ。

近年、圧倒的人気で若者の話題をさらっている菓子といえば、グミがある。
コロナ禍の生活様式の変化で、2022年にはガムを200億円以上上回る市場規模となったグミは、健康志向にも合致している。

キシリッシュガムが2023年、グミに生まれ変わったが、アメもこれからグミのような新しい触感を楽しめる進化を辿るのかもしれない。

社会の変化という荒波に揉まれ、昨今忘れられがちな懐かしいアメ達だが、私にとっては変わらず愛すべき菓子であることに違いない。

ずっと身近にあったからこそ目立たないが、みなさんも懐かしいアメ達を時々は思い出し、手にとって楽しんでもらいたいと思う。

包装の解き方を最初に教えてくれたカンロ飴、ヨーグルト味が人気だったチェルシー、才色兼備のいちごみるく…健康志向で菓子業界が変化していく中、昔ながらのアメの未来は_14
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文・イラスト・撮影/柴山ヒデアキ