長きにわたる手描きアニメのノウハウが凝縮した、新しい表現
――東映アニメーションは日本のアニメスタジオの元祖とも言える会社ですし、今も手描きアニメをたくさん制作されています。『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』では、そうした手描きアニメの伝統的な技術も活用されているのでしょうか?
うちには『ドラゴンボール』を何十年も描き続けているような方々がいるので、彼らの存在は非常に大きかったです。どれだけ絵が上手い人にお願いしたとしても、すぐには『ドラゴンボール』は描けないですからね。鳥山先生ならではのタッチの再現はもちろんですが、アクションにも独特なところがたくさんありますから。
――彼らはどのような役職として参加しているのでしょうか?
作画監督です。彼らにキャラクターの正面から見た姿と横と後ろの3面図を描いてもらい、集英社さんに全キャラOKをもらってからモデリングに入るというのが、今回の制作フローでした。
通常は一枚絵を見てそのままモデリングして、そこから詰めていくという作業になると思うのですが、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』ではまず「鳥山先生の絵」を立体化させるための共通認識を作るため、手描きの3面図を作成するという工程を入れました。『ドラゴンボール』のノウハウを持つベテランたちの存在は、その作業において非常に強みとなりました。
他にも、作画監督の皆さんには、各シーンやカットごとに細かくビジュアルに対して修正指示を出し、より『ドラゴンボール』らしい絵になるようにディレクションしてもらいました。
――キャラクターにアニメーションをつけてカメラワークを決めた上で、そこからセルルックの『ドラゴンボール』として違和感がないように絵を微調整しているわけですね。
そうです。髪型や輪郭などを含め1コマごとに作画監督が修正を入れて、アニメーターがそれに合わせて調整を入れていきました。
――本作は新しい技術と長年培われた手描き作画が融合して、まったく新しい『ドラゴンボール』の魅力を表現した作品だということがよくわりました。その一方で、本作に至るまでの『ドラゴンボール』のあらすじをハイクオリティーの手描きで表現したアバンタイトル(プロローグ)には、2Dアニメの意地というか迫力を見せつけられた思いがしました。
あれは僕が本作に絶対に参加して欲しかったスタッフの一人である作画監督・久保田誓さんによるパートです。
久保田さんの「手描きの一連シーンを描きたい」という要望に応えて担当してもらった部分ですね。
たった2分の映像なんですけど、アバン後が完成してもプロローグだけがいつまで経っても上がらないっていう状況でした(笑)。でも、それだけの絵になっていると思いますね。
――正直、これまでの『ドラゴンボール』関連映像の中でも一番すごい映像だと思いました。
手描きのレベルではズバ抜けてますよね。あれは本当にすごいですよ。まさに神作画です。
インタビュー後半では、アニメへの3D導入の現在や可能性についてうかがった。
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は日本アニメの歴史を変えたのか。「ピクサー的“ポリゴンルックアニメ”には限界が見え始めている」と言われるワケ
取材・文・撮影/照沼健太