欲しいのは"MUTTライフ"
MUTTが初めてのバイカーを惹きつける理由には、もう1つカラクリがあります。
それは、WEBサイトやカタログ等に掲載される写真やビデオの巧さ。バイク自体にはあまりフォーカスを当てずに、そこではMUTTが日常生活の中に溶け込む形で映し出されています。キャンプで車に荷積するシーン、カフェでドリンクをテイクアウトするシーン、仲間とクールにツーリングするシーン…。多くのMUTTERSはそんな写真や映像を自分のライフスタイルと重ね合わせ、「MUTTのある生活」に強く惹きつけられるのです。
「MUTTでは、著名なタレントを使った宣伝はあまり行わないようにしています。それよりも大切にしているのは、オーナー1人ひとりのMUTTのある生活です。たとえば、インスタグラムで検索すると"Mutt Motorcycles.tokyo"というアカウント名のオーナーの方がいらっしゃるのですが、その方の写真を見て購入を決めたり、スタイルを真似したりする方が多くいます。メーカーやディラーを介さず、オーナーの方が自発的に音頭をとってイベントが開催されているのも珍しいのではないでしょうか」(鈴木氏)
私自身のことをあらためて振り返ってみると、MUTTを購入したのは「MUTTというバイクが欲しかった」からではなく、どうやら「MUTTというバイクがある生活が欲しかった」からのような気がしてなりません。これをいうと根っからのバイク好きの方には白い目で見られそうな気もしますが、MUTTのメンテナンスは定期的な掃除とタイヤ圧を調整することくらいで、ほぼすべてディーラーまかせ。MUTTを改造したり、いじることもまったくありません(見た目のカスタマイズを存分に楽しんでいるオーナーもたくさんいるようですが)。
とはいえ、購入から3年が経った今でもMUTTへの愛着は強く、キャンプや釣り、ショッピング、デート、旅行など、MUTTのある生活を楽しんでいます。バイクに詳しくはなくても、そんな「体験」を重視してバイクの世界に足を踏み出してもいいじゃないですか。短い人生が終わる前に、バイクのある生活、そしてバイクで走ることの素晴らしさに気づかせてくれて、MUTTには感謝の念に堪えません。
購入後、そんな思いを伝えた一文をMUTT Motorcycles本社にメールしてみたところ、以下のような返信が。
Hello,
Thank you very much for contacting us.
It's great to hear you have purchased a Mutt, and thank you for the compliments on our brand and design.
We hope you love your Mutt motorcycle as much as we do, and wish you all the best in your motorcycle adventures!
(以下、意訳)
ハロー。
MUTTを買ってくれたようで、ありがとう。僕たちのブランド、そしてデザインについて褒めてくれて嬉しいよ。君が僕たちと同じようにMUTTを愛してくれること、そして君の冒険が最高なものになるように祈っているよ。
遠く離れた、日本の名も知れない私にも答えてくれる。こんなちょっとしたことからも、MUTTが人々を魅了する理由がわかるのではないでしょうか。
文/水川歩 写真/黒田彰