畳の腐った家賃4100円の長屋で憧れたクリスマスケーキ
初めは一人だった活動も、その姿を見た地元企業の社長らが「ええやん!」と寄付をしてくれるようになり、2014年からはVOLCOM STOREを経営しながらさまざまな支援活動を行う細見篤史氏が活動に加わり、現在のプロジェクトへと発展した。
「今のような募金のスタイルにしたのは、俺や寄付してくれる社長らと同じ意見を持つみんなにも参加してもらいたかったから。俺は友達の死をきっかけに思い立った行動やったけど、ケーキ届けに行って子供たちの騒がしい声や喜ぶ顔見たら、元気もらったし。寂しい気持ちをバネにしたらうれしい気持ちになって返ってきた。この感情の循環が、生き甲斐やなあと思うんです」
「西成という街でちっちゃい子もおばちゃんもおっちゃんもニコニコしてほしいから」とSHINGOは言う。
「ガキのころからワケありの人が入って来ても排除されないこの街で育って、食べ物を分け合ったり困ってる人が助け合ったりするのを見てきたんです。西成で育って一番学んだのは“分け分け精神”。それをみんなにも知ってほしくて、それに共感してくれる人だけ募金に参加してくれたらって思ってる。“俺もできる、おまえもできる、俺らにもできる”というのを伝えていきたくて」
ワンホールケーキに憧れたSHINGO自身の幼少期のクリスマスケーキの思い出も聞いた。
「家賃4100円の畳が腐ってる長屋で、母ちゃんは毎日のように暗い部屋で“死にたい”って泣いてるような暮らしでした。だからってただ暗いガキだったわけじゃなく、ないモノをほしがるんじゃなくて、あるモノをどう使って楽しむかを考えてた。
晩ごはんは隣のおばさんとおかずを分け合って毎日のようにみんなで食べてたから大家族みたいだった。クリスマスケーキも“ウチ買うたから真悟くんも食べや”って一緒に食べてたから、ひとり息子のクリスマスも寂しいことはなかったです」