――今回の国会で児童福祉法が改正されて、「こども家庭庁」が創設されました。一連の流れをどう見ていましたか。
「ずっと現場で働いてきたり、問題を訴え続けてきたりした方たちのおかげかなと思っています。ただ今だけ話題になるのは切ない。私自身は児童養護施設とか社会的養護についてみなさんにもっと知ってもらいたいと活動をしてきたので、今は話題が上がって嬉しいんですが、それに満足したくはないという気持ちの方が強いです」
田中さんは昨年末、その体験を綴った『児童養護施設という私のおうち』(旬報社)を出版。児童養護施設について理解を深めたり、「社会的養護(事情があって親元で暮らすのが難しい子どもたちを、国の公的責任で保護・養育し、その家庭について支援すること)」の大切さを訴えたりしている。
子どもたちが敏感に感じる「支援してあげる」視線
――田中さんは本を書いたり講演したりして、児童養護施設などについて認識を広める活動をされてきました。その中でいちばん理解されていないな、と感じたことはなんですか。
「それで言うともう本の帯(「かわそいそう」はもう古い!)に書いてある通りですね。施設にいる子はかわいそうだから、古着やランドセル、食べ物を寄付する、そういう先入観から寄付行動になっていると思う。それは、やっぱりちょっと違うかな、というのがあります」
――というと?
「支援してあげるって、支援する側、される側の上下関係を含んでいると思っていて、それを子どもたちは敏感に感じとっています。特に施設を出た子は、 やっぱりその関係性に違和感を持っているんですよ。『支援してあげる』っていう言葉にはしてないんですけど、行動とか言動で伝わってくるんです。それに対して、大人に幻滅しちゃうっていう子も少なからずいます」
――「かわいそう」という思い込みが、理解を妨げている、と。
「それともう1つ、『日本の子どもたちは大丈夫だろう』っていう思いが日本人にはあるのかなと思います。今ようやく、いじめとか、不登校とか、ヤングケアラーなどが認知されてきたと思います。けれども、やっぱり日本の子どもたちも辛い思いをしている。そういうことを大人が見逃してきた、見てこなかった結果が、今なので。児童養護施設も同じように、あんまり大人が目を配ってこなかったから、知られていないのかなって思ったりします」