政策に柔軟性を希求するのは無謀だろう
台湾についても「新時代の党の台湾問題解決の基本方策を貫徹し、独立反対、祖国統一促進を貫き」、「祖国の平和的統一への道を歩む」などと「平和的統一」の美辞麗句を並べただけだった。
そして金融、治安、ハイテクが共産党の直接管理となった。ここが一番重要なポイントである。
西側の制裁に対抗し、習近平が統制を強化する目的がある。つまり国務院がこれまで専管事項としてきた分野も共産党直轄になったわけだ。
治安では公安、国家安全部と戸籍の管理を共産党内務工作委員会へ移管する。金融では人民銀行と金融監督部署が共産党のふたつの委員会に権限移管され、科学技術と教育部門が党の専門委員会の直轄となる。
人事面では新首相に経済のド素人、李強が任命された。前任の李克強は北京大学経済学博士号。続投が決まった易鋼(人民銀行総裁)はイリノイ大学博士号を持つ専門家だった。
国家副主席には韓正が選出された。王岐山前副主席は完全な引退に追い込まれた。しかし人民銀行総裁に居座ることになる易鋼は中央委員候補からもすべり落ち、もはや飾りでしかない。胡錦濤時代に人民銀行総裁だった周小川にはやや独自政策の裁量権があったが、金融も共産党直轄となれば、政策に柔軟性を希求するのは無謀だろう。まして経済の回復なんて!
中国は米国と並ぶ「特許大国」となったそうな
こうみてくると以下の報道がいかに白々しいか。
中国は米国と並ぶ「特許大国」となったそうな。実態は研究論文と申請件数のおびただしさで、他人の論文の剽窃や横取りも多い。ただしこれからもつれるであろう難題は、日本や米国と中国との共同出願による特許がかなり存在することである。中国と共同研究をすること事態が間違いだったのである。
とくに中国の特許はEV、スマホ、太陽光パネル、電池、レアメタルなどの先端分野に集中している。中国はこれら共同特許も解釈変更で中国の特許としている。トヨタは中国との共同特許が30件、まるで人質ではないか。
筆者が『日米先端特許戦争』を書いたのは1983年で、そのときから防衛直結特許は非公開とすべきだと主張してきたが、2022年になってようやく国家安全保障に関する特許の非公開が決まり、予想される特許収入は国が保証するという制度ができた。39年かかった。
国際学会での論文数では米国を抜いて中国が1位である。以下、韓国、台湾、日本とつづき、技術大国だった日本の地位低下が顕著になった。10年後に日本人のノーベル賞受賞者はいなくなるかもしれない。
米国企業での問題は、研究者の中に圧倒的に中国人が多く、わけてもテスラの技術陣は中国人が過半である。つまり中国人エンジニアが不在となると、世界各地で生産効率が下降する。一方、中国のBYDがついにテスラの売れ行きを抜いたのである。