2022年の経済政策に点数をつけるとしたら…「30点ですね」。荻原博子氏が岸田政権をメッタ斬り はこちら
岸田政権下で賃上げは実現するのか?
――2023年の日本経済の見通しについて、うかがいます。2022年12月、岸田政権が総合経済対策で掲げた「4本の柱」を中心に第二次補正予算が成立しました。2023年以降、物価高騰や賃上げなどの対策に充てられますが、どう評価されますか?
そもそも、4本も柱が必要だったのかが疑問です。繰り返しますが、今は「家計の底上げ」の1本の柱で十分でしょう。幅広く手当をしているようで、実のところ各省庁の要求を鵜呑みにして、予算が膨れ上がっているようにも思えますね。
――中小企業に賃上げや生産性向上を促す費用として7800億円の予算が計上されています。
賃上げのために補助金を交付しても、成果が上がらなければ無駄遣いになってしまいます。実際、日本では20年間以上ほとんど賃金が上がっていませんよね。
企業が賃金を上げられないのも仕方ない側面があります。日本企業の内部留保は500兆円を超えていますが、なぜそんなに溜め込むのかといえば、景気の見通しが立たず不安だからです。
それに、賃金は一度上げてしまうと、その額を毎年従業員に支払わなければいけませんが、助成金や税額控除が受けられるのは一定期間に限られます。この状況では賃上げを躊躇しても仕方ないでしょう。
だから、予算をつけて満足するのではなく、実際に効果がある政策を実行するのが大切なのです。例えばスウェーデンでは、生産性を上げられない企業は潰れてしまう市場的な仕組みがあるから、国全体で生産性が向上して賃金も上がっています。
かつての安倍政権が導入した高プロ(高度プロフェッショナル制度。一部職種における労働時間の上限規制などを撤廃する制度。「残業代ゼロ法案」とも呼ばれる)のような政策を打っているうちは、生産性の向上は夢のまた夢ですよ!
――そのほか、来年度の企業への支援策としては「スタートアップ支援」があり、第二次補正予算では1兆円規模の予算が盛り込まれていますが……。
これについても、単なる「大企業優遇」にならないように注視が必要で、研究機関や研究者に予算がしっかりと回っているのかを精査しなくてはいけません。
でないと、海外への頭脳流出に歯止めが効かなくなってしまいますよ。実際に、充実した研究環境を求めて海外に拠点を移す研究者が増えています。
日本の技術力の低下は、ワクチン開発において象徴的でした。北里芝三郎や野口英世を輩出した国ですから「日本はワクチン開発にもきっと先進的だろう」と思い込んでいた人は多いはずです。
しかし、結果はみなさんもご存知の通り。ワクチンをなかなか開発できず、海外の製薬会社から購入せざるを得ませんでした。
このまま日本の技術力がやせ細っていかないよう、基礎研究などを手厚く支援していくべきだと思いますね。