「この会社おかしいかも……?」女性が抱いた違和感

大学では国際学部に所属していて、さまざまな価値観や文化に触れる中で、もっと視野を広げていきたいという気持ちが自然と芽生えていった、ばらんさん。就職活動でもそうした学びを活かせるような環境を探していたが、「自分は何がしたいのか、どんな仕事が向いているのか」といった軸はまだはっきりと見えないまま、時が進んでいった。

ばらんさんが大学生活を過ごしたキャンパス(ばらんさん提供、以下同)
ばらんさんが大学生活を過ごしたキャンパス(ばらんさん提供、以下同)

「どちらかと言うと、社会に出てから考えればいいかなと楽観的な姿勢で動いていたように思います」

最終的には、いくつかもらった内定の中から、生活していける待遇かどうか、将来的にも応用が利きそうな業務内容かどうかを軸にして、とあるメーカー会社に総合職として入社することになった。

英語や文章力を活かしてクリエイティブな分野にも関われる可能性がある、という説明を受けたことも、ばらんさんが入社する決め手の一つになった。

そして2020年4月、ばらんさんの社会人生活がスタートした。しかしこの年は、ちょうど新型コロナウイルスの感染者が日本で発見されたころ。

ばらんさんが入社した会社では、入社早々に最初の2か月間が完全リモートでのスタートになった。

「リモート中は、課題に取り組んだり指示を受けたりする日々。深夜にピリついた内容のメールが届くなど、『この会社おかしいかも……?』と小さな違和感は抱くことはありましたが、新卒で先の見えない状況の中、とにかく順応することに精一杯でした」

そうして6月、ばらんさんは初めて会社にリアル出社。ここで、リモートワーク中に感じていた違和感の正体に触れることになった。

朝、新入社員が集められ、スマホの電源を切って箱に入れるよう指示された。さらにオフィスを見まわしてみると、若手社員の姿はほとんどない。そして研修という名のもと、社長がひとりで長時間にわたり、会社の沿革や理念を語る時間が始まった。