自分の権力のもとに総てを集中させる党独裁熱中症候群
経済通の李克強も王岐山も周小川も不在となった、かろうじて対米交渉をやってきた劉鶴もお払い箱、習近平独裁3期目の政権中枢に経済通がいない。
にも拘わらず党が金融行政を直轄するとしたため、党中央に「中央金融委員会」と「中央金融工作委員会」を設置した。
また中国銀行保険監督管理委員会を基礎に国務院に「国家金融監督管理総局」を新設した。改革の第1弾は銀行員の給与引き下げだった。従来、職員の給料は公務員の2倍以上あった。
習近平は行政組織をいじくるのが好きで、軍のシステムをまず7大軍管区から5大戦区として、次に4大総部(総政治部、総参謀部、総後勤部、総装備部)を15の部局に分割した。軍人の不平たらたらだったが、要するに自分の権力のもとに総てを集中させる党独裁熱中症候群に取り憑かれているからだ。
すなわち中央軍委の「7大部・庁」となったのが中央軍委弁公庁、中央軍委聯合部、中央軍委政治工作部、中央軍委後勤保障部、中央軍委装備発展部、中央軍委訓練管理部、中央軍委国防動員部である。
習近平独裁への忠誠を競うような組織改悪
中央軍委「3大委員会」は中央軍委紀律検査委員会、中央軍委政法委員会、中央軍委科学技術委員会である。
そして「5大弁公室・署・局」とは中央軍委戦略計画弁公室、中央軍委改革・編制弁公室、中央軍委国際軍事合作弁公室、中央軍委審計署、中央軍委機関事務管理総局。それぞれが細かな任務も分からずに右往左往していた。
4大総部体制では軍を動かすのは総参謀部であり装備品、武器の開発、保管などは装備部だから汚職の巣と言われた。総政治部が権力を持っていた。
現在の15の部局では、いったい誰が、どの軍人が軍を掌握しているのかが不明となり、結局効率的な軍の運営という目標ではなく習近平独裁への忠誠を競うような組織改悪である。
チャイナウォッチャーのなかに中国の体制を「地方分権的全体主義」と呼ぶ人がいる。「習思想」などと意味不明の個人崇拝体制で行政と経済政策が、最高指導部管轄となれば、国務院以下の中央官庁の存在意義はどうなるのか?
いうまでもなく行政機構は無力化し、無骨格状態となり、党中央独裁、いや個人独裁の毛沢東時代と変わらなくなる。
香港とマカオの「一国二制度」の方針を揺るがさずに貫徹すると唱えながら(すでに反古となっているが)、「法に基づく統治を堅持する」とした。香港とマカオの自治を踏みにじったが、「法に基づく統治」と言うのは、その後、勝手に作った共産党支配の合法化のための「新法」を指す。