ある日、突然やって来る急性内斜視
──スマホを長時間使用して視力が低下している患者さんが増えていると感じたのはいつ頃からですか?
この3年くらいですね。コロナ禍の巣ごもり生活でスマホを使う機会が増えて、近視の深さ(近視の進行度合い・近視進行の深刻さ)が尋常でない方が増えたと感じました。
──記憶に残る患者さんは?
16歳の男子高校生が、フラフラになって父親に抱えられて診察室に入ってきたんです。もちろんアルコールは口にしてはいませんが、泥酔しているような感じで、目の焦点も定まっていませんでした。
「見えない」という訴えだったので、診察してみると両目が内側を向いているいわゆる“急性内斜視”という状態でした。
──急性内斜視とは?
左右の眼のどちらか、もしくは両方がある日を境に、急に内側を向いている状態です。私たちの眼は近くを見るとき内側を向く“寄り眼”状態になります。このとき長時間近くのモノ、例えばスマホ画面などを見続けて、その状態が固定化されると、その視線の先にしかピントが合わなくなります。ですから、それ以外のところに視線を移すと、二重にダブって見えるようになってしまうんです。