日常生活がままならない急性内斜視

──なぜ高校生は急性内斜視になったのですか?

わたしがその男子高校生に「(スマホで)ゲームやりすぎたの?」と聞いたら「違います」という返答でした。父親も「スマホは禁止にしているので、そんなことはないはずです」と言っていました。

しかし、その後、父親に診察室を出てもらって、2人っきりになると、「実はスマホのやり過ぎで親に怒られて、1週間取り上げられていた」って言うんですよ。

それから解禁になって、週末、それこそ寝ずにずーっとスマホでゲームをやっていたと言いだしたんです。急性内斜視の状態で、ここまで酷い症状の患者さんは初めてでした。物が見えないだけでなく、自分で歩くことすらできない、日常生活が送れなくなるほど目に影響が出たケースでした。少し大げさかもしれませんが、社会的あるいは機能的に失明です。

スマホ利用の禁止や特殊な眼鏡の使用といった保存的治療がうまくいかないと手術(※)をすることになりますが、たとえ手術がうまくいき、医師が治ったと思う状態でも、本人的には視力に違和感を感じることが多く、完全には元の状態には戻らないと思ってください。

※手術には、眼を動かす筋肉(外眼筋)の付いている位置を移動させるなどがある。

長時間のスマホで、両目が内側を向く急性内斜視になり高校生が失明寸前に…ある日突然襲ってくる“スマホ失明”の対策と見極め方_2
写真はイメージです

――“急性内斜視”にならないためにはどうすればよいですか?

まず大前提として、長時間スマホを凝視しないことが重要です。例えば、アメリカでは、“20―20―20のルール”があります。これは「20分間継続して近くを見た後は、20フィート(およそ6メートル)以上離れたものを、20秒間眺める」という取り組みです。

また、急性スマホ内斜視のほとんどの症例は、眼鏡やコンタクトレンズを装用しない状態で、スマホを長時間使用することが最もリスクが高いと考えられているので、「度が合った眼鏡をかけて生活する」「近視の人はこれ以上近視が進まないためにも、スマホを使う時は、眼鏡やコンタクトレンズを装用する」「帰宅して眼鏡やコンタクトレンズを外したら、スマホは見ない」といった対策が有効です。