「閉店の際にいただく電話が一番嬉しい」

オタフクソースに入社して24年、一貫してお好み焼きの普及に携わってきた春名さん。これまでのキャリアを振り返り、特に印象に残っていることは何だろうか。

「かつて開業支援の研修を受けた方から、店を閉める時に電話をいただくことがあります。『長い間お世話になりました。ありがとうございました』と。それが一番嬉しくて。

店がオープンする時には皆お礼を口にしますけど、そこから15年くらい経って、店を閉めることになった際に、『オタフクさんのおかげでここまでやってくることができました』と、わざわざ連絡してもらえるなんて、ジーンと来ますよね。むしろ、ずっと商品を使ってもらっていたわけですから、こちらこそありがとうございますという気持ちです」

そうした深い関係性を築ける顧客を増やすためにも、お好み焼課としてやるべきことはまだまだある。春名さんが常に部署のメンバーにも伝えているのは、「世界中でお好み焼きが必要とされるメニューになる」ということだ。

G7広島サミットでも存在感。オタフクソースの「お好み焼課」に課せられたミッションとは?_8
新入社員を指導する春名さん
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「未来永劫、お好み焼きに廃れてほしくはありません。であれば、お好み焼きを社会にとってなくてはならないものにする必要があり、そのために私たちオタフクソースがどう行動するかが大きなテーマです。お好み焼きの魅力発信はもとより、社会の変化にも対応しなければ駄目です。

例えば、今だったら、全員が英語でお好み焼きをきちんと説明できるようにならないと、海外の人には伝わりません。もしかしたら10年後にはキャベツがなくなるかもしれない。そうなったら、キャベツを使わないレシピを考えないといけません」

お好み焼きという食文化を決して絶やさないように、世の中の動きを常にキャッチアップすることが不可欠だと春名さんは強調する。

加えて、同じような思いを持った人を社会に増やさないといけないとも考えている。そのためには「小さい頃からお好み焼きを食べたり、触れたりする機会をもっと作らねば」と力を込める。既に小学校などで食育の授業を行っているが、その取り組みを加速させていく。

お好み焼きの未来を熱く、真剣な顔つきで語る春名さん。
後編では、広島お好み焼きのおいしい焼き方を、実演を交えて解説してもらう。

取材・文・写真/伏見学

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