「ワタミ」「白木屋」らを抑えて台頭してきた“特化型居酒屋”
日本フードサービス協会が発表する「JF外食産業市場動向調査」の2023年3月度の調査によると、居酒屋の売上は前年同月比でプラス82.6%を記録。酒類の提供制限が解除されるなど、コロナ禍が落ち着きを見せ始めたことで上昇傾向にあるようだ。
そんな居酒屋業界において、近年増えてきたスタイルがあるという。
「『肉汁餃子のダンダダン』や『串カツ田中』『鮨・酒・肴 杉玉』に『銀だこ酒場』といったブランドに代表されるような、“看板として掲げる名物料理”を持ったスタイルの“特化型居酒屋”が流行っているんです。
『白木屋』や『ワタミ』などに代表される、だいたいオールジャンルの料理が揃うファミレスのようなスタイルで人気を博した“総合居酒屋”に代わる存在として、2019年ごろから急速にその店舗数を増やしてきた印象があります。
もちろん特化型居酒屋といっても、メインとなる商品以外のメニューも多少は揃えていますが、そのメニュー数やコンセプトの面で総合居酒屋とははっきり異なる存在です」(フードアナリストの重盛高雄さん)
ズバリ、こうした特化型居酒屋が増えてきたワケとは?
「2010年代後半から、昭和的な飲みニケーション文化が下火になっていったことが理由に挙げられるでしょう。昭和から平成の中頃までは、仕事を終えたサラリーマンたちは上司に連れられ、大人数で飲み屋をはしごするのが定番という風潮がありました。
ですが、平成の末期頃から徐々に仕事とプライベートを分けて考えるというスタンスが浸透していき、飲み会のあり方が変化していきました。そしてこうした流れを加速させ、それまでの飲み会文化のあり方に終止符を打ってしまったのがコロナ禍です。倦厭され始めていた上司との飲み会に、“行かなくていい大義名分”が加わってしまったわけですね」