役柄だけでなくプライベートもナイスガイ

そう、トム・ハンクスは演じる役柄だけでなく、本人も最高にいい人です。どんなときでもユーモアと謙遜を忘れません。

「ハリウッドで一番のナイスガイ」
「地球上で一番のナイスガイ」
「アメリカのお父さん」

アメリカでは色々な呼び方で、彼の人柄が表現されています。

「僕はアップとダウンの差があんまりないタイプだと思う。僕がイライラしたり、子供に使ってはいけないと教える汚い言葉で怒りを吐き出したりする瞬間があるかって? そうだな……プリンターが言うこと聞かず、紙を入れ替えても何をしても動かないときだね」(トム)

トム・ハンクスが『エルヴィス』で演じたのは、キャリア唯一のバッドガイ_d
テレビシリーズ『バンド・オブ・ブラザース』(2001)の取材で著者と。トムは製作総指揮と1話の脚本、5話の監督を担当した
©HFPA

ナイスガイのイメージについてはこうも語っています。
「嫌なヤツだと思う相手には結構厳しいから、“ハンクスは決してナイスガイじゃない”と言う人がいても驚かない。常に守っているのは、誰にでも敬意を持って接するということ。ところが、それを忘れてしまうときだってあるんだよ。はっきり言えるのは、僕はパーフェクトな人間ではないということ」

トム・ハンクスが『エルヴィス』で演じたのは、キャリア唯一のバッドガイ_e
妻のリタ・ウィルソンと
ロイター/アフロ

今年で結婚34年になる、妻で女優のリタ・ウィルソンに、「ハリウッドで一番のナイスガイと結婚した感想は?」と聞いたことがあります。
「まだ結婚前でデートを重ねているときに、彼なら一緒にやっていけると感じた言葉があるの。それは、“僕と結婚するからって自分を変える必要はまったくない。ありのままでいてくれればそれでいい”という言葉よ。その言葉を彼が破ったことは、一度もないわ」
うらやましい話です。

順調なキャリアを築き、今やハリウッドで確固たる地位を築いているトムですが、実は、意外な過去があります。「人生を大きく変えた瞬間はありますか?」という質問に対して、こんなことを語っていました。
「本当はシェアしたくないけど、話すよ。人生で大きく何かが変わったと思った瞬間があった。あれは『ビッグ』(1988)の公開のときだった。それまで僕は、離婚してふたりの子供を持つシングルファザーで、友人の家に住んでいたんだ。その上、深刻な税金問題を抱えていて歯医者に行くのも(アメリカの歯医者の治療費は異常に高いのです)ままならない状況だった。『ビッグ』が公開されると評判がすこぶるよくて、上昇気流に乗っていける予感がした。公開時にはリタと結婚もできたし、アカデミー賞候補にもなって、自分のやってきたことが実り始めていると思えた瞬間でもあった。これで家賃も払える、歯医者にも行ける、色々な問題から解放されそうだと実感できた。何かが大きく変わったと思える瞬間だったんだ」