市場を押し上げているのはAIではない
いまの東京市場を見て、多くの市場関係者は「AIバブル」「半導体バブル」と口にする。確かにAI関連、半導体関連というだけで株価が数倍にも10倍にも買われている企業は少なくない。
決算を見ても、中期経営計画を読んでも、現在の株価を正当化できるだけの利益成長を見込める企業ばかりではない。それでもAIという言葉だけで資金が流れ込み、日経平均株価は史上最高値を更新し続けている。
しかし、私はこの相場の本質はそこではないと考えている。本当に市場を押し上げているのはAIではない。政府がつくり出した歴史的な円安なのである。
高市政権はアベノミクスの継承者を自任している。しかし、ここで決定的に違うことがある。
安倍政権が誕生した当時、日本は長年の円高とデフレに苦しんでいた。輸出企業は国際競争力を失い、企業収益は伸び悩み、日本経済全体が閉塞感に覆われていた。
だからこそ大胆な金融緩和による円安政策には一定の合理性があり、日本経済を立て直す効果もあったのである。
ところが現在はどうだろうか。ドル円相場は160円を超え、日本円は歴史的な安値圏にある。日本人の国際的な購買力は急速に低下し、世界から見た日本は「安い国」になってしまった。
その状態でさらに円安を容認し、円の国際的価値を押し下げる政策を続けても、日本経済が本当に豊かになるとは私には思えない。むしろ失われるのは、株価ではなく国力そのものではないだろうか。
今回、政府が7月中旬にも閣議決定を目指している骨太方針の原案を見て、私はその懸念をさらに強くした。
戦略分野への官民投資や社会保険料改革など様々な政策が並ぶ中、市場が最も敏感に反応したのは金融政策に関する記述だった。
政府は日本銀行法第4条や政府・日本銀行共同声明の趣旨に沿って、日本銀行との緊密な連携を求める姿勢を打ち出した。一見するとごく普通の文章だが、市場はそう受け止めなかった。
「政府は追加利上げを望んでいない」。そう読んだのである。実際、その報道が伝わると円安はさらに進み、ドル円は一段と円安方向へ動いた。市場は極めて正直だ。













