最も深い亀裂は、地方と中央の間に走った
下院議員のグルリョフ元中将は「すべてをカバーすることは不可能だ」と認め、広大すぎる領土ゆえに大都市や軍需工場を「点」で守るしかないと告白した。元防空司令官にいたっては、第二次大戦時代の灯火管制を都市に導入せよと提案する始末である。
軍内部の腐敗も露呈した。無人機部隊トップのユーリ・ヴァガノフは、配管業出身で軍歴もないことから「トイレのユーラ」と揶揄され、彼の推薦がなければ実戦で有効なドローンですら採用されないという腐敗した調達システムを築いたと告発されている。
不当にドローンを奪われた部隊が、航空支援もなく突撃を命じられ、無駄な犠牲を強いられていると兵士たちは激怒している。
クルスク州では、同盟国・北朝鮮から供与された防空システムを、情報共有の欠如からロシア軍自身が誤射して破壊するという前代未聞の同士討ちまで起きた。
そして、最も深い亀裂は、地方と中央の間に走った。
ウクライナと国境を接するベルゴロド州。住民にとって空襲警報もドローンも、もはや日常茶飯事だ。彼らは自分たちが見捨てられていると感じている。
政府への信頼喪失は、静かに、しかし確実に臨界点へ
国営「チャンネル1」が平和な日常を伝える投稿をした際、ベルゴロドの住民たちが殺到し、コメント欄を「#ベルゴロドもロシアだ」というハッシュタグで埋め尽くした。
モスクワの平和を守るために、自分たちが盾にされている。その悲痛な叫びである。彼らはまだ反政府デモを起こしてはいない。だが政府への信頼喪失は、静かに、しかし確実に臨界点へ向かって蓄積している。
クレムリンはこの現実を隠そうと躍起になっている。モスクワへの大規模攻撃の後、外務省報道官は民間被害だけを感情的に非難し、石油インフラへの決定的打撃には一切触れなかった。
国営テレビ各局は、数百機が飛来した攻撃の報道を合計1分未満に抑え込んだ。さらにモスクワ市長は、攻撃の被害映像を市民が公開・共有することを全面禁止し、違反者に罰金を科した。燃え盛る石油ターミナルを背景に自撮りした2人が逮捕される事態も起きている。
しかし、隠せば隠すほど、不信は募る。前線で血を流し、燃え上がるインフラをSNSで目の当たりにしている人々に、「すべて計画通り、被害は軽微」という官製の物語は通用しない。
皮肉なことに、政府がTelegramの遮断に踏み切った結果、それを警告手段に使っていた最前線のロシア軍防空部隊が、接近するドローンの情報を受け取れなくなった。













