本宮先生の漫画は女性がエロいですもんね〜(江口)
本宮ひろ志(以下、本宮) 江口さんはこれだけずっと女を描けて、じゃあ女が好きかっていうことなのよね? それで、好き?(笑)。
江口寿史(以下、江口) 好きです(笑)。
本宮 もう俺の年になるとね、そういうの何も感じなくなって。
江口 早くその境地に到達したいです。
本宮 いやいや、すぐですよ。
江口 煩悩が一つ消えるってことは、一つ楽になれるのかな、みたいなのはありますね。
(脚本家の)山田太一先生もそういうことを書いてましたよ。70過ぎたら女性を性の対象として見ることが一切なくなって、それはそれでとても新鮮だって。
でも、そうなったら僕は絵を描かないかもしれないですけどね(笑)。煩悩があるから描けてるのかもしれないですけど。
本宮 俺なんかは、大事なものにこだわることをみんなやめちゃうんですよ。
俺、顔を描くのは好きなの。でもそれを鉛筆で下絵から描くのはもう面倒くさいし大変だし時間かかるんで、全部人にやってもらうの。顔だけ自分で描いて、あとはうちのスタッフに頼むんです。
例えば俺が女(キャラ)なんて描けるわけがない。そうすると、うちのかみさん(もりたじゅん氏)も漫画家だから、「女の絵の下描きをやってよ」って言ったらさ、やってくれないよね、そりゃ。でもあるときからやってくれるようになって。だから俺、時折、女の絵が巧くなってるの(笑)。
江口 本宮先生の漫画は女性がエロいですもんね〜。
本宮 例えば『サラリーマン金太郎』(1994〜2016年、数度の休載期間をはさみつつ発表)を描いてるときに、こういう女を描こうとイメージして決めてたんだけど、かみさんとケンカしちゃって描いてくれなくなっちゃったの。
それでアシスタントに女の子がいたから「ちょっと、女キャラの下描きしてくれ」って描いてもらった女に、金太郎が全然惹かれないんだよね。なんなんだろうと思って。
それでかみさんに「ごめん、原稿料で割り切ってくれ」と言って、金太郎の奥さんになる美鈴っていうのを描いてもらったの。そうしたら、「え?」っていうぐらい金太郎が“いく”のよ。
何が違うんだろうと思って聞いたら「あんたバカだね。ただ鉛筆で絵を描くだけじゃなくて、この女の脳みそも描くの」って言われたとき、「ああ、そうですか」と。
それで金太郎は美鈴と結婚して話が進んでいくんだけど。
江口 美鈴さんには心が入ってるんですね。下描きするとき、脳も描くってすごいですね。いただき(笑)。