「金太郎、大物に屈せず。」(集英社文庫・コミック版2巻収録)

『サラリーマン金太郎』が予言していた日本の未来

『サラリーマン金太郎』第23話で展開されるのは、企業ドラマの枠を超えた政治論、そして国家論だ。この回が“未来を予言していたのではないか”と語られることがあるのも、無理はない。

関東の総会屋を束ねるフィクサー・三田善吉は、初対面の金太郎を前に、日本の歴史を「起承転結」の物語として語り出す。

敗戦後の自由と豊かさが「起」と「承」。バブル崩壊が「転」。そして次に来る「結」は、日本という国家の消滅かもしれない――。

さらに三田は、その先の「次なるストーリーの起」として、「地球国家」「地球政府」の誕生を示唆する。

さすがに飛躍しすぎでは、と一瞬思う。だが妙に引っかかるのは、その理屈が具体的だからだ。

三田はこう言う。

「明治維新のときも敗戦の後も、日本の指導者たちは何をなすべきか明確に分かっておった。今はそれすらも上回る大変革期であるにもかかわらず、政治家も官僚も明確なストーリーを何一つ持っておりません」

さらに続ける。

「保守的な発想のもと、おのれらの政治的・経済的利益を追い、日本をがんじがらめにしている。規制一つ撤廃できない」

この漫画が描かれたのは約30年前。それにもかかわらず、いま読んでも違和感がないどころか、妙に生々しく響く。

もちろん、日本消滅という未来が来てほしいわけではない。三田自身も「私の勝手な仮説かもしれん」と前置きする。だが同時に、「その仮説が正しいとしたら、日本の指導者たちには今、なさねばならぬことが山ほどある」とも言い切る。

断言と仮説。その両方を抱えたまま放たれる言葉だからこそ、単なる時事批評で終わらない。

このエピソードを10年後、20年後に読み返したとき、私たちは何を思うのだろうか。

名作とは、その時代を越えて何度でも読み直されるものだ。『サラリーマン金太郎』第23話の政治論は、令和の読者にもなお強く突き刺さる。