「金太郎、会社を恋する。」(集英社文庫・コミック版2巻収録)
金太郎の革新的過ぎた会社への要求
『サラリーマン金太郎』第24話で飛び出すのが、新入社員・矢島金太郎の爆弾発言だ。
営業部の正社員となり、晴れて本格的なサラリーマン生活がスタートした金太郎。新入社員研修の打ち上げで、黒川社長が「抱負や質問はないか」と促すと、金太郎は手を挙げる。
「質問ではありません。要望です」
そして言い切る。
「皆さんが何をしているのか知りたいと思いますので、役員会を見学させてください」
役員会を新入社員に開放してほしい――。当時の企業文化を考えれば、かなり大胆な要求だ。周囲からは笑いも起きる。だが金太郎は真顔で続ける。
「私は会社と恋愛をしたい」
好きになった男と女に秘密はタブー。同じ会社の仲間なのだから、ケチケチせず見せるべきだ――という理屈だ。
青臭い、と笑うこともできる。世間知らずだ、と片づけることもできる。だがよく考えれば、彼が求めているのは会社の“透明性”だ。意思決定の場をブラックボックスにするな、と言っているに等しい。
黒川社長は後になってこの発言を振り返り、「脳天を打ち抜かれた気がした」「組織に長くいると、既成概念に麻痺させられる」と漏らす。
前例がないからやらない。慣習だから続ける。組織は閉じる方向に傾きやすい。金太郎はそこに、ためらいなく風穴を開けた。
令和の企業では、ガバナンス強化や情報開示が進み、株主総会のオンライン化や決算説明会の公開配信も珍しくない。透明性や説明責任は、もはや常識の言葉になっている。
そう考えると、金太郎の発言は無鉄砲どころか、むしろ早すぎた提案だったとも言える。
とはいえ、役員会そのものを新入社員に傍聴させる会社は、いまでも多くはない。だが、いつかそれが特別なことではなくなる日が来るのかもしれない。
「会社と恋愛をする」という大胆な言葉は、組織と本気で向き合えという宣言でもある。社会の変化は、こうした一見突拍子もない提言から始まるのだ。























