職員も被災者に……家族は金沢に避難
集英社オンライン取材班は1月22日、家屋の倒壊などにより99名の犠牲者を出した石川県珠洲市に到着した。市内唯一の火葬場である「珠洲市営斎場」では、霊柩車が出入りするためのエントランスの外壁がところどころ崩れ落ちている。また、施設のガラス窓は割れ、ブルーシートで覆われていた。
震災による被害はこれだけではない。仏壇に置かれたろうそくは倒れ、施設内には電気すら通っていない。人がいる気配も一切なく、施設の前にある20体ほどのお地蔵さんは無残にもすべて倒れていた。
市内で葬祭センターの役割を担う「やすらぎ会館 すず」課長の沢村亮一さん(52)はこう語る。
「「珠洲市営斎場では現在、全ての窯(=火葬炉)が使用できない状況で復旧の見通しも立っていません。そのため1月1日以降、当施設では多いときだと50体ほどのご遺体をお預かりしていて、新規の受け入れを停止していた時期もありました。この珠洲市営斎場の再開のめどが立たないため、金沢市まで火葬(=広域火葬)しにいかれるご遺族の方も多かったです」
一時期は棺に納めた遺体を安置するためのドライアイスが足りない状況にも陥り、職員全員でなんとかかき集めたこともあったという。しかし、そう話す沢村さんも被災者の一人。沿岸部にある自宅は津波の被害で半壊し、家族は金沢に避難しているという。多くの遺体を預かっていた当時を沢村さんはこう振り返る。
「なかには損傷が激しく、圧死しているご遺体もありました。検視の段階で立ち会っているとはいえ、やはり当施設にお顔を見に来られると、感極まって泣き出してしまうご遺族の方もいましたし、かなり辛く大変な状況でした。現在では、広域火葬のおかげでお預かりしているご遺体もずいぶん減りましたが、油断できない状況は続いています」