通常どおりの熱を保持できるかわからないが再開を決めた

その一方で、奥能登(能登半島北部)の火葬場の中でも、いち早く再開したのが「能登三郷斎場」だ。当施設の所長、大庭毅さんはこう語る。

「能登三郷斎場では、震災の影響で火葬炉1基の自動ドアが開かなくなりましたが、ほかの2基には目立った損傷もなかったため、1月6日からご遺体を受け入れています。しかし、稼働している2基も損傷しており、耐久性の問題などから一日に3体までしか受け入れられないのが現状。そのため、ご遺体は能登町内で2体、能登町外で1体と制限を設けていますが、明日もすべて予約で埋まっています」

また、震災はスタッフの健康状況にも影響を及ぼしている。同施設の女性職員はこう語る。

「1月14日から16日までの間、火葬炉の職員3名がコロナに感染した影響で、もともと3日前に火葬する予定だったご遺体を、今日受け入れているんです」

能登三郷会場(撮影/集英社オンライン)
能登三郷会場(撮影/集英社オンライン)

この日、施設内に入っていく霊柩車だけでなく、喪服姿の遺族も数組確認できたが、喪失感や疲労感からか、歩くのがやっとの状態に見えた。

こうした極限状態のなかで運営を続ける火葬場だが、これから受け入れを再開するところもある。輪島市穴水町環境衛生施設組合が運営する「やすらぎの杜」だ。いまだに天井から蛍光灯が落ちている状況ながら、なぜ受け入れ再開を決めたのか。同組合の事務局長の畑山諭氏はこう語る。

「現在『やすらぎの杜』では、火葬炉4基のうち2基が炉内の損傷により使用できない状況になっています。また、ネットなどの通信や水道も止まっていて電気のみ通っている状況にありますが、火葬に必要な灯油が地元の業者さんから購入できるとのことで、24日以降受け入れを再開することに決めました。炉内の損傷もあって、通常どおりの熱を保持できるかわからないので、プラントメーカーの人にも来てもらう予定です」

しかし、現在もネットの予約システムが使えない状況が続いており、職員への電話しか予約手段がないため、火葬場の再開を待たずに、金沢市などの火葬場で弔う広域火葬を行う遺族も多いという。

天井の蛍光灯の一部が落ちている状況のなか受け入れを再開した輪島市の「やすらぎの杜」(撮影/集英社オンライン)
天井の蛍光灯の一部が落ちている状況のなか受け入れを再開した輪島市の「やすらぎの杜」(撮影/集英社オンライン)

「東日本大震災のあと、輪島市では広域火葬の訓練やシミュレーションを何度も行なってきた甲斐もあり、17年前の能登震災のころよりも動き出しはスムーズでした。もちろん1日に20~30体を搬送することはできませんが、計画的に連絡がきて、金沢からご遺体を運ぶ搬送車が来ている状況です。

市民の方たちにしてみれば『もっと早くしてくれ!』という思いもあるかもしれませんが、広域火葬の対応はこれでもかなりスムーズに行なえているはず。もちろん通信システムがいち早く復旧すれば、今まで通りの動きをできるようにしたいという思いはあります」

未曾有の大震災から間もなく1カ月。被災地の厳しい状況は続いている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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