美化されすぎる「分相応に生きるサムライ」

こうした、ミスをしないようにリスク回避を最優先する意識の背景にも、文化的自己観があり、日本の文化や歴史が影響を与えています。ここでは、「サムライ」について取り上げてみましょう。「サムライ」は、日本の文化の中でも象徴的な存在として広く浸透し、人気が高く、支持されやすい存在です。

野球の日本代表は「侍ジャパン」、サッカーの日本代表は「サムライ・ブルー」をそれぞれ愛称としています。それ以外のスポーツでも、選手が男性の場合には「日本の若きサムライが、世界の大舞台で躍動しています!」と活躍を誇ることがよくあります。

サムライは、スポーツだけでなく、大河ドラマや映画、漫画やアニメなどのエンターテインメントの登場人物としても人気です。

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サムライの出てくる物語では、江戸時代の幕末・明治維新の時期を除けば、基本的に「主に仕えてお家を守る」が正しい道として描かれます。苦境に耐え忍び、慎ましやかな幸せを守るため、懸命に生きる姿が良しとされやすいはずです。

その理由は、サムライの社会は、生き方が固定化されていて、分相応な立ち振る舞いを守ることが、自分の命、家族の命を守ることに直結する時代観だからです。