失敗したら「切腹」「お取り潰し」

数百年にわたって続いたサムライの社会では、失敗は、「切腹」で自身の命、「お取り潰し」で家の断絶という、あまりに大きなリスクがありました。だから、何よりも失敗しないことを最優先して、自分の立場や周囲からの評価を常に念頭に置き、慎重な判断や行動を取ることが当たり前だったのです。

ミスをしない人材が評価される日本社会。あえて学びたいユニクロの「一勝九敗」の経営哲学とは_4
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サムライの中でも階級が分けられ、江戸時代には200以上の藩がある中で、尾張・紀伊・水戸の三藩は「御三家」と呼ばれる別格の地位にあったり、土佐藩の中では「上士」と「下士」に分けられて明確な上下関係が作られていたりして、家格などに応じた、分相応な立ち振る舞いが固定化されました。

このサムライに肯定的な文化で生まれ育つと、エンターテインメントやスポーツを楽しむ中で、無意識のうちに、分相応に生き、リスク回避を最優先して、自分や家族を守る姿勢が当たり前化しやすくなるでしょう。

失敗したとき、「これは切腹ものだね」「腹を切ってお詫びしなきゃね」などと上司に冗談交じりに言われる人や、スポーツ選手に対してSNSなどで簡単に言ってしまう人が多いのには、こうした背景があります。


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※1 DIAMOND Chain Store online「ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”」を参照。

必要のない「みんなに悪いことをした」という意識
本当はおかしい日本の部活動
ハリウッドの日本の描写が誤ったままなのは怒らないから
大谷翔平でも心が揺らぐことがあった

文/永井竜之介
写真/shutterstock

分不相応のすすめ
永井竜之介
ミスをしない人材が評価される日本社会。あえて学びたいユニクロの「一勝九敗」の経営哲学とは_5
2023/11/20
¥2,200
216ページ
ISBN:978-4911194003
「これくらいが自分にはちょうどいい」。生活でも仕事でも無意識に作ってしまう「分相応」の自己評価。じつはこれが「壁」となり、挑戦や成長が妨げられている。その原因は「日本らしさ」にあった。マーケティングの科学的知見を背景に、自分の「分相応の壁」を破り、周囲の空気に負けずに、現状を打開するためのマインドとメソッドを提示。「自分はこんなもの」と悟ったように見えて、「本当は自分を変えたい!」という諦めきれない本音を多くの人が隠し持っている。行き詰まりを感じて思い悩む現代人に必読の一冊。
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