ユニクロの「一勝九敗」の経営哲学
ベンチャー業界は、多産多死が当たり前とされていて、新しく作られた会社のうち、巨大ベンチャーまで飛躍できる確率は、極めて低いものです。それでも、運と実力をどちらも兼ね備えて、奇跡的な飛躍を遂げることを夢見て、多くの起業家が挑戦していく業界です。
また、新しいイノベーションを創ろうとするときも、沢山の失敗を経験することを覚悟の上で挑戦するのが前提となります。
ユニクロを「世界を代表するアパレル」まで飛躍させた柳井正さんは、新しいことに挑戦すれば10回に9回は失敗する、という「一勝九敗」を経営哲学としていることで有名です。※1 積極的に新しいことをやってみて、ダメならすぐに撤退して、10回のうち1回の大成功によって、数多くのヒット商品を生み出して、会社を飛躍させました。
しかし、日本は「ベンチャー大国」でもなければ、「イノベーション大国」でもありません。新興のベンチャー企業よりも、歴史が長く、安定成長を重視する大企業や中小企業が圧倒的に多い国です。
リスクを覚悟の上で、新しいイノベーションに挑戦するよりも、堅実に、改善・改良を積み重ねていく道を選びやすく、またその改善・改良を得意分野としています。「一か八かの大成功」は、フィクションの物語や、別世界の話としては面白くても、日本の多くのビジネスパーソンにとって自分事にはなりません。なぜなら、自分事である仕事の日常では、「ミスだけはしないで」と言われ続けているからです。