集中力があっという間になくなるTikTok
ドウイン(中国版ティックトック)とティックトックは急速に世界へと広がった。それは徹底的な競合分析と細部への強いこだわりのおかげだ。
しかしこれらのもつ特徴に目を向けると、2つのアプリをライバルから際立たせたのは、とりわけ2つの特徴だった。
1つ目は動画の長さ、2つ目は動画を提供する際のアルゴリズムだ。
まずは動画の長さについて。注意力の持続時間は自分たちの周囲の世界によって変化しやすく、影響を受けやすいものだ。気が散る要因―お腹をすかせた赤ん坊の泣き声、やるべき仕事のチェックリスト、大きなプロジェクトの差し迫った締め切り―をすべて取り除けば、長く詳細な物語を綴った本書のような本に没頭することができる。
だが、気が散る要因を次から次へと積み重ねていくと、集中力があっという間になくなることに気づくだろう。科学者が長年研究し、心配しているのがそれだ。
日々あふれんばかりに与えられる情報が、深い思考力や数秒以上何かに取り組む能力を阻害するのではないか。
誰でも有名になれると言った15分という時間は15秒になった
明らかにそうだろう。カナダの研究者が、ミレニアムの変わり目に2000人を対象に注意力の持続時間の研究をし、そして同じ実験を15年後に再び行った。
そのあいだに―家庭用コンピューターが急激に普及し、ユーチューブとiphoneが出現、手ごろな家庭用ブロードバンドインターネットの有用性が上がりコストが下がった―人間の脳がスイッチを切る前に一つのことに集中できる能力は12秒から8秒へと3分の2に減少した。
ほんの短い時間しか集中できないという当面の関心事の観点からだけの話ではない。
さまざまな研究者による長期的分析から、情報が豊富にあふれていることと注意力の消耗とは関連があることがわかっている。
「新しいものを求める衝動によって、人間はトピックをまとめて迅速に切り替えようとする」とマックス・プランク教育研究所の研究員が話してくれた。
私たちの注意力持続時間の減少に多少なりとも責任のあるソーシャルプラットフォームが、わずかばかりの集中力を与える手助けもしている。ティックトックは私たちの注意力が続くあいだだけ注意を引き、続いてそのままスクロールしてくれそうな次の動画を提供するよう微調整されている。
コンテンツパートナーシップ部門のトップによると、ほとんどの動画は喜びを15秒から30秒にはじけさせ、短時間でできるだけクリエイティブになるようコンテンツを作成させている。
新たなクリエイターへの内部ガイダンスでは、動画は最低でも10秒を超えるように、なるべく11秒から17秒にまとめて投稿するようアドバイスしている。
かつてアンディ・ウォーホルが誰でも有名になれると言った15分という時間は、ティックトックの新世界ではまさしく15秒になっている。